パナソニック汐留美術館で開催中の【マイセン動物園展】へ行った感想と、購入したグッズについて書こうと思います。
一部撮影可能なのですが、前半部分は撮影可能な作品が多く驚きました。さほど撮影できる作品はないのだろうと勝手に思い込み、携帯電話のバッテリーが少ないまま展示室へ入ってしまったのですが。充電器を持って入るべきだった、と今さら後悔しています。
何度も展示室をぐるぐる戻って見てしまうほど可愛らしかったり、リアルだったり、どうやって作ってるんだろう????と驚くものもあって楽しかったです。
展示品の約9割が初出品なのは、個人所蔵のものが多いからだそうです。すごい、これだけ大小様々な作品を集めてくるのも大変だったんだろうなぁと思うのですが。いや、もしかしてどなたか1人の方のコレクションだったらすごいな、いや、どうなんだろう、なんて考えなくてもいいところまで妄想しておりました。
何をコレクションするにしても、数があったらあったで保管場所も必要だし、ましてや壊れやすいものは管理が大変そうだけれど。好きなものに囲まれている暮らしは羨ましいものです。
Contents
開催概要
場 所 | 汐留パナソニック美術館 JR汐留駅からの”ほぼ”濡れない行き方は、こちら |
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期 間 | 2019/7/6(土)〜9/23(月・祝) |
時 間 | 10:00〜18:00(入館は17:30まで) |
休 館 日 | 毎週水曜日 |
公式ホームページ | こちら |
展覧会のチラシ | こちら(pdf形式) |
作品リスト | こちら(作品リストはpdf形式です) |
割 引 | ※ ホームページ割引があります。使い方は、公式ホームページを参照ください。 ※ ぐるっとパスをお持ちの方は、追加料金無しで展示を見ることができます。 ぐるっとパスとは? |
簡単にマイセンの歴史(ロココ様式のものを作るようになるまでの流れ)
マイセンの公式ホームページに掲載されている歴史を参考に作成しています。
西 暦 | 出 来 事 |
東洋から輸入するしかなかった磁器を、領内で焼けるようにならないものかとザクセン選帝候フリードリッヒ・アウグスト1世(そしてポーランド王アウグスト2世でもある)通称アウグスト強王が野望を抱く。
(ウィキペディアによると、アウグスト強王は”驚異的な怪力の持ち主であったことから「強健王(Mocny)」「ザクセンのヘラクレス」「鉄腕王」などの異称で呼ばれ”ていたそうです) |
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1701 | アウグスト強王は19歳の錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベドガーを軟禁し磁器を作るよう命じる |
1709 | 自然科学者でもあったチルンハウス伯爵の手助けもあり、欧州で初めて白磁の製造に成功(伯爵は前年の1708年に死去)
※ 最近の研究では、伯爵がこれよりも前に磁器を完成していたのではないか、という説もあるそうです。 |
1717 | ベドガーそして職人たちの努力により染付磁器の焼成に成功 |
1719 | 磁器の製造方法が漏れることを恐れたアウグスト強王により軟禁され続けていたベドガー。ストレスもあり酒浸りとなり、死去。享年37歳。 |
1720 | ウィーンより絵付師ヨハン・グレゴリウス・ヘロルトが招かれ、強王の望む柿右衛門の色磁器の写しも手掛ける |
1722 | アウグスト強王の紋章である双剣をマイセンの窯印として使うことを許可。ただし、シュヴェルトラーとよばれる専門絵付師だけが窯印を描ける。 剣マークの変遷は、こちらのページの下にあります。 |
1724 | ヘロルトが宮廷御用達の絵付師に任命される |
1731 | ヨハン・ヨアヒム・ケンドラーが成型師として招かれる
※ 主に第1章で彼の成形師としての仕事を見ることができます |
1733 | アウグスト強王が死去 |
1736 | アウグスト強王が好んだ重厚なバロック調&大作の彫像とは違う、優美なロココ様式&小さい作品も作り始める |
展示
第1章 神話と寓話の中の動物
神話や寓話を主題とした絵画は多くありますが、マイセン磁器でも神話と寓話をモティーフとした作品が作られているそうです。
『猿の楽団』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー/ペーター・ライニッケ
指揮者、歌手、ハープ、ホルン、チェロ、オーボエ、バグパイプなどなど総勢21匹。指揮者の譜面台まであります!
人間を風刺しているそうです。まさに猿真似?!
それぞれの表情豊かなこと!手にしている楽譜にも音符らしきものが書き込まれています。みんな衣装も違うし細かい!
女性立像『五感の寓意〈視覚〉』
美術作品において、人間の五感は通常5人の女性として表現され、「視覚」は鏡などを持物とすることが多い。本作は女性が鏡と望遠鏡を持ち、クピドも眼鏡をかけランタンを手にして「視覚」の寓意を示している。
また五感は、動物によって表されることもあるが、本作品では卓越した視力を持つ鷲が女性の足元に添えられている。
そういえば、『貴婦人と一角獣』のタペストリーも女性でしたね。
神話人物群像『ヒッポカンポスの引く凱旋車に乗るネプトゥヌス』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
布が布にしか見えない。固いはずなのに、このなめらかな感じ。あと色使いがとても上品で美しいなぁと。
見上げる女性が美しいなぁ、と見とれていたら。その下にいる魚に釘付け。
口と、口じゃないところからも水を出している……。荒れる水の表現がすごい。
筋肉の表現もすごいなぁ。
”ヒッポカンポス”というのは、ギリシア神話に登場する半馬半魚の海馬だそうです。前脚に水掻きがついているのも特徴とか。おお、水掻き!
神話人物群像『アンフィトリテの勝利』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
アンフィトリテはポセイドンの奥さんだそうです。そういえば、先ほどのポセイドンと同じ模様の布をまとっているような?
亀や貝の再現もすごい!よく見れば珊瑚も顔を出してますね。
左下にいる、目をクリクリとさせたのがイルカというのが驚き。
1730年中頃以降、ケンドラーとその弟子たちは数多くの彫像や群像、小型彫刻を制作した。これらは元来、中世以降、貴族たちが正餐(せいさん)会を催す際に自らの権威や富を示すために金銀細工や砂糖菓子、蝋細工などで作らせた「シャウエッセン」と呼ばれるテーブル装飾で、次第に磁器製に置き換わっていき、流行に応じてさまざまな像が作られた。
女性像『四大陸の寓意』展示風景。
4人の女性の姿で表現される四大陸の寓意は、17世紀以降の美術の分野で広く用いられたテーマである。
女性像『四大陸の寓意〈アジア〉』
香料が東方由来のため香炉を持ち、ラクダを従えているそうです。香炉の感じといい、細かい部分まできれいに仕上げてありますよねぇ。
女性像『四大陸の寓意〈アフリカ〉』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
象の首を被りライオンを従えております。ライオンも嬉しそうに上を向いているのが可愛いです。
女性像『四大陸の寓意〈ヨーロッパ〉』
世界の女王として冠を被り馬を従えているそうです。世界の女王。なるほど、確かにほかの3人は冠をかぶっていないですね。
女性像『四大陸の寓意〈アメリカ〉』
先住民にちなみ、羽飾りを被りワニの一種であるカイマンを従えているのそうです。ウィキペディアによると、カイマン亜科は比較的小さく、ほとんどの種は体長数mにしか達しないとのこと。だから、女性に対してさほど大きくないのですね。
めちゃくちゃ歯並びが綺麗だし、目も可愛い。顔だけ見ると恐竜みたい。
『山羊に乗る仕立屋』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
眼鏡をかけ、体の随所に裁縫道具を身につける山羊と男性。一節にブリュール伯爵のお抱え仕立屋がモデルとされ、ユーモラスで巧みなモデリング、細やかで美しい絵付けが目を惹くが、風刺的意味合いが強い。
身分の低いものを野次る貴族に悪戯として、目の悪い仕立屋が目の悪い山羊に乗って、目的の晩餐会にたどりつけない様子を表現したものと言われている。
風刺という意味合いから見ると、個人的には好きではないのですが。ただ、作品として素晴らしいな、と。
山羊の頭にはアイロン、角にはハサミがひっかかり、尻尾には針山。
柔らかそうな山羊の毛並みの感じ、洋服の裾の流れ、今にも動き出しそうです。
現在でも作られているのか、マイセンの公式ホームページに同じ感じの作品がでていました。だいぶ色合いが違っていますね。
お次は、自然界を形成する基本要素である四大(しだい)元素を擬人化した水差しが並びます。
人物像水注『四大元素の寓意〈地〉』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
農耕の女神ケレス(Ceres)は、”農業、特に穀物の収穫を司るため、英語で穀物を意味するシリアル(cereal)の語源となった”とウィキペディアにありました。
取手にはトウモロコシ、胴の部分には鹿やクマに襲いかかる犬たち。
せっせと土を掘っている天使。「自分だって、目立つところにいたいのに」とぼやいている風にも見えてしまいました。
裏面は、穏やかな風景となっていました。
それにしても天使のお尻がキュート。
人物像水注『四大元素の寓意〈空気〉』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
左にいるのが孔雀を連れた女神ヘラだそうです。把手のブルーが鮮やか!羽の意匠は空気からの連想でしょうか。右端の天使は口からフーーーッ!と吹き出してますね。
こちらの背面は穏やかな空が。
人物像水注『四大元素の寓意〈水〉』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
海神ネプトゥヌスが泳いでいるかのように横に配置されています。足元には、あのギョロッとした目を持つ怪魚たち。
右端にいるのは、前脚に水掻きを持つ”ヒッポカンポス”たち。
一頭だけ振り返っていますね、何が気になったんだろう。
それにしても、よく壊れずにここまで保存、運送されてきたものだと感心。日本での展示は地震の可能性もあるから貸し出す側も心配になったりしますよね。表面上は、ものすごいがっつり固定されているようには見えないけれど、テグスのような透明な糸で支えているようにも見えないし、この展示台自身も免震構造なんだろうか?!と見ていまいました。
人物像水注『四大元素の寓意〈火〉』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
燃えております、燃えております、山火事です。
把手はドラゴン。今にも火を吹きそうです。
神話人物像『牡鹿の引く凱旋車に乗るディアナ』
原型製作者:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー
この丸いもくもくは雲だと思ったんですが、それでいいのかしら。……雪?いや、雪ならこの色合にはしないだろうし。アップの写真も撮影しようと思っていたのに、バッテリー残量がないことが気になって……残念。
『ライオンヘッド両手付飾壺』
もう、把手しか目に入りませんでした。
このデザイン考えた人、すごい。蛇の柔軟性?と、それをライオンに咥えさせるなんて、どうゆうところから考えつくのか。
そそっかしい私としては、怖くて把手は掴めそうにありません。いや、むしろ掴まれるつもりはないのかもしれない。
展示では見られない角度からの写真をフェイスブックにアップしてくださる美術館の方、お優しい。
プット立像『昼と夜の寓意』
象徴的な概念や想像上の事柄をイメージで示す「アレゴリー(寓意)」表現は、磁器以前にも金銀細工や彫刻、製菓で作られており、マイセンでは後期バロックからロココにかけて多数の寓意像が作られた。
本作は昼と夜が子どもで表され、昼は太陽をイメージする冠を被り、夜は眠りを司るフクロウを従えるなど、仕草や持物、色彩で昼夜を対比させている。
確かに、夜の足元にはひっそりとフクロウが。
手を伸ばし元気いっぱいな昼と、ちょっとうつむき加減で内向的な夜。ただ、どちらもおへその形がキュートなのでした。
そして目の端に捉えてから、ずっと気になっていたシャンデリア。
一体何キロあるんだろうか……。
下には鏡が置いてありまして、落ちたらどうなっちゃうんだろうと冷や冷や。厳重に固定してあるとは思いつつも、冷や冷やしながら見てました。
ちなみに、マイセンの公式ホームページを見てみたらレモンのシャンデリアが紹介されていました。重さは60200gとのこと。60キロぐらいってことですかね。見かけでは、展示されている方が重そうな気も。
これをデザインした人も、作り上げた職人さんも凄いですよねぇ。装飾が重すぎればパキっと折れちゃうだろうし。いやはや、びっくりしました。こんなに大きなものも作っていたなんて。奥にちょこっと見える鏡も、すごい大きさで。こういうのが欲しい!という方がいらしたんでしょうか。
いやはや、もう第1章から想像以上の作品ばかりでした。マイセンというと食器のイメージが個人的には強かったので。そうですか、いやはや、すごい。
第2章 器に表された動物
マイセンなどヨーロッパ陶磁器工房では、いわゆる器にも動物装飾が用いられています。それらは描かれたり彫刻として付加されたりさまざまな形で表され愛らしさを添えています。また、たくさんの小花彫刻を貼り付け磁胎を装飾する、いわゆる「スノーボール」はマイセンを代表するシリーズのひとつであり愛好家も多く存在します。スノーボールは徐々に鳥類の彫刻が付加され自然主義的要素が濃くなっていきました。第2章ではスノーボール作品を中心に、器の形態のマイセン作品に表された動物たちをご紹介します。
『スノーボール貼花装飾蓋付昆虫鳥付透かし壺』
一体、何枚の小花を貼り付けているんでしょう??
カブトムシやカタツムリ、鳥。
iPhoneのバッテリー残量が気になって、中のカナリア見てなかったなぁ……本末転倒。
これ、万が一いただいたら、もう箱から出さないで慎重に保管しておこうかと。いや、いただくことはないんですけれど。万が一、いただいても宝の持ち腐れになるので然るべきところに寄贈するかと。いや、ですから、いただくことはないんですけど。
『ヴァトー風恋人図ポプリポット』
花々と彫像に装飾された壺、蓋にはポプリが香るように透かし彫りが施されている。中央窓枠内にはヴァトー風田園風景が繊細な筆致で描かれる。ロココ時代のフランス画家アントワーヌ・ヴァトーらの作品は版画化され、広くヨーロッパ中に流布し人気を集めた。マイセンでも18世紀なかばからそれらに着想を得たデザインが器の絵付けとして好んで用いられた。
こちらも、もう恋人図の存在を忘れるぐらい周囲の装飾に釘付けでした。その証拠に、恋人図のアップの写真がない!!なんてこった。
葉や花のグラデーションも美しく。
足元に潜むキューピッドも可愛らしい。
このポプリポットを飾っても、まったく違和感のない世界というのがこの世の中にはあるんだろうなぁ……。
『昆虫鳥図皿』
アウグスト強王は狩猟用別荘近くに動物園を所有し、別荘の周囲に設けた人工の池で水鳥たちを飼育した。マイセンの彫刻家たちはこれらの動物を間近で研究することで、多くの優れた動物彫像を作り出したという。
1750年代には鳥が定番の装飾モティーフとなりNo21、22(『昆虫鳥図皿』)の絵付には銅版画を模したと思われる陰影表現、精緻な昆虫の描写が見られる。
せっかくならば昆虫をアップにすべきなのですが、昆虫が苦手という理由で見送りました。
そういえば16世紀後半に生まれた神聖ローマ帝国皇帝・ルドルフ2世も自分の動物園を持ってたとか。Bunkamuraザ・ミュージアムで開催された【ルドルフ2世の驚異の世界展】の展示に説明がありました。
『白鳥皿』
水鳥の中でも白鳥は”王者の鳥”とされ、18世紀には王族が所有する動物園でのみ飼育が許された。本作は、中心から放射線状にゆるやかに波打つ線条文と二羽の白鳥、飛翔する鷺と葦叢で魚を捕らえる鷺を浮き彫りレリーフとし、透明感のある落ち着いた色彩を施している。
……これは、あれですよね。日常には使わないで飾っておくバージョンですよね?口元に花びら当たるし、え、本当に使っていたのかしら……。
『スノーボール貼花装飾ティーポット』
スノーボールはアウグスト強王の息子アウグスト3世が王妃に「枯れない花を贈りたい」という願いから作られたモティーフであり、時代とともに彩色した小鳥や草花で飾られ、より立体的で自然主義的かつ装飾的なものに発展した。
本作は小花で埋め尽くされた上に小花のボンボンがつき、金色のバラと蔦で装飾される。中央に小鳥が憩う華麗で上品なティーポットである。
親子して、無茶振り。やれ磁器を作れ、やれ枯れない花を作れって。言う方は簡単でいいですよねぇ、と職人さんたちがぼやいてそう。
『スノーボール貼花装飾カナリア付二人用ティーサービス』
貼花装飾の「スノーボール」はマイセンを代表する加飾法のひとつである。マイセンでは18世紀前半にケンドラーが、コーヒーとティーのセルヴィスに用いたのが最初のスノーボールの加飾とされ、その後18世紀なかばに彩色した鳥のモティーフが加えられるようになった。白く丸い花の球体はとてもかわいらしく日本にも多くの愛好家が存在する。
セルヴィスとは”統一感を持った磁器製品のセット”という意味のようです。
『スノーボール貼花装飾蓋付カナリア付鶴首飾壷』
……もうどこを持って運んでいいか分からない。勤めた先のお屋敷に置いてあったら、絶対触っちゃいけない。掃除して、とか言われても掃除したふりするか、息吹きかけてホコリ払って掃除したことにするかしかない。いや、お屋敷に勤める予定はないのですが。
今回の展示で、正直自分の目を疑ったのが
『貼花狩猟図鹿浮彫蓋付パンチボウル』
一体どういうことなんだ。いや、鹿ですよね。それは分かるんですが。狩猟で仕留めた鹿でしょうか。それを?小花敷き詰めてる上に?舌を出した状態で??ベロンと置く???
把手も、これだと折れちゃいそうな気がしておちおち持てないような?このなかに、どんな料理を入れたのでしょう……。
第3章 アール・ヌーヴォーの動物
19世紀末から20世紀初頭にかけ、ヨーロッパの美術工芸界ではアール・ヌーヴォー(ドイツ語圏ではユーゲント・シュティール)と呼ばれる様式が流行しました。
これは曲線の多用に代表される有機的なフォルムを特徴とした様式で、マイセンでも取り入れられました。そしてこの曲線を生かすためにマイセンでは色彩部分でイングレイズという技法を導入しました。これは釉薬の中に絵具を染み込ませ閉じ込める技法で、柔らかな見た目と磁胎と釉薬に挟まれたことによる定着性が特徴と言えるでしょう。イングレイズ:模様を釉薬の上に描きながら、焼成時に釉薬のなかに染み込ませる技法のこと。
マイセンがつくる犬のうち4割以上は19世紀後半から20世紀前半にかけて製作されたものだそうです。展覧会では犬に関する展示品の撮影はNGでした。猫は写真撮影可能だったのに、なぜだろう(泣)。犬を飼ったことがある身としては、あの可愛さを写真に撮りたかったな、なんて贅沢なことも思ったり。
下の作品は、アール・ヌーヴォーの動物彫刻を得意としたエーリッヒ・オスカー・ヘーゼルの『二匹のフレンチブルドッグ』。これまた展示室では見られない角度の写真をフェイスブックにアップしてくれています。すごく嬉しいです。
動物は後ろ姿までもが可愛いですよねぇ。寄り添っているのが愛らしい。愛おしい。
もちろん、マイセンでは猫も作られています。こちらも19世紀後半から作られているようで。猫のしなやかさや柔らかい毛の質感を表現するのにイングレイズの技法が使われているそうです。
目が合った気がします。
「ぎこちなさの残る」と書かれた説明文を右側の猫ちゃんが読んでいるようにも見える。
タイトルどおり、すごく警戒されている気がしました。
『木の幹に横たわるオオヤマネコ』という作品は写真撮影不可だったのですが、イメージとしてはこんな感じで、もう少し高い幹に悠々と寝そべっている姿が好きでした。
観察力と画力に優れてないと、やはり型は作れないんだなぁと、しみじみ。
蓋物『コイ』
鯉の形の蓋物。19世紀半ばの制作のため、アール・ヌーヴォー期の作品のような柔らかさや愛らしさは感じられずかなり写実的な作品である。
鯉はドイツやチェコといった中欧でも食の対象とされ、特にドイツでは養殖が盛んであったという。
本作品では、目やヒゲ、ヒレなど生々しいほどであるが、うろこの丁寧な描き方に、マイセンの絵付け職人の誇りを見ることができる。
まさか中欧でも鯉が食べられていたとは。
この喉元が、いかにも本物らしくて、ぞわぞわっとしました。
そうそう、いろんな動物がいて楽しかったなぁ。
左奥に見えるのが『四羽のオウサマペンギン』。一羽として同じ方向を向いていないというところに、つい笑ってしまいました。先頭の子が、足場の悪いところに踏ん張っている感じも好きです。
右の『曲芸をするアシカ』は、その身体のツルツルした感じといい、姿勢といい、まさにアシカ。鳴き声が聞こえそうです。
第4章 マックス・エッサーの動物
マックス・エッサーは1920~30年代のマイセンでモデラーとして活躍した彫刻家です。マイセンにおけるアール・デコ様式を確立した一人ですが、とりわけベッドガー炻器で制作した動物彫刻が彼の名を知らしめた作品群と言えるでしょう。
エッサーに影響を受けた成型師による動物彫刻も展示されています。
……まったく写ってないに等しいけれど、せっかく撮影したからと無理やり載せる私。
恐ろしく、写真が下手。
マイセンのアール・デコ期を代表する作家として知られるエッサーはベドガー炻器で優れた作品を数多く制作した。
(写真の作品は)動物の精悍な顔を浮彫にしたレリーフ彫刻で、本作のオラウータンはあごに手をやりほくそえむようだ。目元や鼻、口元など人間に近い猿たちの豊かな表情をユーモラスに巧みにとらえている。
確かに。ほくそまれている。どうやってこの人間を始末しようか考えてそう。ぶるっ。
『トラのマスク』
目が赤く光るし、人が作品の前に立つと威嚇するかのような音を出すようになっていました。
ベットガーが磁器焼成の前段階として開発に成功した赤色炻器は、長年生産が途絶えていたが、1918年 技術者ヴィリアム・フンクが彫刻素材として再現に成功し、1919年「ベットガー炻器」として商標登録された。
優れた可塑性をもち、硬く滑らかな素材感が魅力で、本作は口を大きく開け、牙をむいて威嚇するマントヒヒの力強さをリアルに再現している。
なるほど。素材自体が途絶えていたんですね。そういうこともあるのかぁ。
『オオカミ(ライネケのキツネ)』
ゲーテの叙事詩『ライネケ狐(ぎつね)』をモチーフにしてる作品だそうですが。はて、それは一体どんなお話なのか??
中野京子さんによるこの作品の解説&『ライネケ狐』のあらすじが、こちらで読めます。
ものすごいドヤ顔のライネケくん。
こちらの作品も撮影可能だったんです。だったんですけれども、両サイドが撮影禁止でですね、全体を撮影するとしたらどうしても両サイドが写りそうで、そうすると監視員の方に注意されてしまうかもしれない、という恐怖(?)に襲われ上と下だけ撮影してきました。
独特な色味ですね。
『バタンインコ付モンキーボウル(ライネケのキツネ)』
バタンインコ……知らなかった。
『カワウソ』
当時の経営者は彫像の素材としてベットガー炻器の使用を促したが、アール・デコ様式の名手、エッサーはそれに応えて優れた作品を生み出した。
なかでもこの「カワウソ」は1937年のパリ万博でグランプリを受賞したモデルである。立ち上がり後ろを振り返るカワウソの一瞬の動きを捉えた見事な描写力が目を引く逸品である。同じ型で現在は白磁で復刻されている。
白磁だと、またイメージが違いそうですね。マイセンの公式ホームページで、写真が見られます。
暗くなってしまいましたが、くるんと巻かれた尻尾には毛並みが。ちゃんと爪もありますね。
鼻先のシワが可愛らしい。
ガラスの反射を避けられず。残念。結構、凛々しい表情してますね。
360度見られると、何枚も写真を撮ってしまうという。
マイセンの工房の様子でしょうか。このカワウソくんが作られている途中のようです。
絵はがき
A4クリアファイル
A4の紙を挟んで撮影してみました。
振り向き美人ならぬ、振り向きカワウソ。
表面には、様々な作品が散りばめられています。
あぁ、そうそう、この作品も可愛かったなぁ、と思い出せて嬉しいです。
同じ図柄でチケットホルダーがあったような気がします。
製造過程
マイセンのインスタグラムに、製造過程を紹介する動画がアップされていたので貼っておきます。
マイセンの製造工程が日本の公式ホームページにも紹介されていますので、よろしければこちらをクリックしてみてください。
まとめにならないまとめ
動物モチーフが好きなので、この展覧会があると知ったときからとても楽しみにしていました。そして期待以上に楽しい展覧会でした。
まさか、こんなに写真が撮影できるとも思わなかったし。
それにしても、人を軟禁してまで磁器を作らせようとした強王恐るべし。でも、その異常なまでの熱意のおかげでマイセンが誕生したわけで。そして、現在作られている作品をマイセンの公式ホームページで見てみると、受け継いでいるものもあれば、まったく新しいものが見られて展覧会へ行ったときも、行った後も楽しい展覧会でした。