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映画『ゲティ家の身代金』ネタバレ感想

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

前々から見たいと思っていた映画『ゲティ家の身代金』。

Amazonで100円のときにレンタルしてみました。

 

 

 

 

 

一言で感想を書くならば、すごく興味深い内容ではあったけれど個人的には少々物足りなかったかな、と。

あの話も、この話も、もう少し掘り下げた部分が欲しかったと思ってみたり。でも、映画を見た後にWikipediaを読んだりして、うーむと唸りつつ、どこがフィクションで、どこがノンフィクションだったのかと考えてみるのも面白かったです。

あと、この映画の原案になったという本を読みたくなりました。

 

映画は事実に基づいているけれどフィクションを交えたものだそうですが、この本はノンフィクションとのこと。孫が誘拐されたというのに誘拐金の支払いを拒否した富豪ジャン・ポール・ゲティを軸に書かれているんだそうです。なぜ彼は支払いを拒んだのか?

映画でも答えとなる部分は出てきますが、もっとその言動の奥に隠された彼の気持ちを知るにはこの本も読んでみたいと思いました。

なお、この映画はR15+指定です。確かに、あのシーンは……。

 

予告編

当たり前ではありますが、本編の内容を含みます。一切のネタバレを見たくない方はご注意ください。

 

 

劇中で取り上げられる時系列

1948 ポールの祖父ジャン・ポール・ゲティがサウジアラビアから石油を輸入開始
1958 ポールの祖父が石油を運ぶための大きな船”スーパータンカー”を造る
1964 サンフランシスコで暮らすポールたち。しかし仕事を求め祖父のいるローマへ。ポールは祖父からミノタウロス像をプレゼントされる。
1965 祖父がプレイボーイ誌の取材を受ける。「資産が数えられるようでは本当の富豪ではない」
1971/8 モロッコで酒と麻薬に溺れるポールの父。
1971/9 サンフランシスコにて義父と離婚条件を話し合うポールの母。彼女はお金は一切いらないから子どもたちの監護権だけを求める。
1971/10 ローマ空港にポールの姿。「向こうにいたかった。パパたちと一緒で楽しかったのに」←とても楽しそうには見えなかっけどね
1973/7 ローマで娼婦の品定めしていたところを男たちに誘拐されるポール。
  南イタリア カラブリア州にある家に軟禁される。
1973/7/10 祖父のところへ孫誘拐の一報が入る。しかし株取引に夢中な彼は「今はダメだ」
  脅迫状はポールの筆跡で書かれ、要求額は1700万ドル。
  イングランドにあるゲティ邸に母親が乗り込む。チェイスがポールの捜索を祖父から命じられる。
  ドイツ、カルフォルニアなど世界各地から息子を誘拐したという手紙が母親あてに届く。
  母親の警護と逆探知のために家に警察が来る。
  誘拐犯からタバコの火が消えたからとマッチをもらうポール。
  ポールに顔を見せてしまうチンクアンタ。ピコリーノに告げ口はしないから、ポールにも自分のことは言わないことを約束させる。
  ポールは自分を誘拐する狂言誘拐の計画を立てていたことを知るチェイス。イギリスにいる祖父に報告する。激怒する祖父。しかし引き続きチェイスはローマに居て孫が戻るのを待つように命ずる。
  誘拐犯のうちの一人が、うっかりポールに顔を見せてしまう。
  ポールの遺体が発見されたと警察から一報が入り、確認に行く母親とチェイス。
  遺体は誘拐現場にいたのと同じクルマから捨てられた。焼かれた上に海水につかっていたので損傷が激しかったものの、明らかに中年男性のものだった。
  遺体はエットレ・パッツァーノと判明。33歳。窃盗、器物損壊などの前科あり。用足しに行ったポールに顔を見られた人でした。
  パッツァーノの仲間も判明し、カラブリア州へと乗り込む母親、チェイスそして警察。しかしポールは別のマフィアに売られたあとで、ポールの着ていたジャケットと書きかけの脅迫状が残されていた。
  ポールを買ったのはブランドの偽バッグを作っている人物。付き添ってきたチンクアンタもその人物に雇われ、引き続きポールの面倒を見ることになる。
  チェイスは祖父に、今度の誘拐相手は金のためなら容赦なくポールを傷つけるだろうと進言。しかし「無駄遣いする金はない」と一蹴される。
  チェイスはチンクアンタとの電話で、これまでの経費20万ドルを支払うこと。しかし身代金は支払わないと言ったことでチンクアンタだけでなく母親も激怒。母親に受話器で殴られ額から出血。
  夜にチンクアンタから電話があり、1700万ドルから700万ドルに変更。
  隠し持っていたマッチで即席の吹き矢を作り、火事を起こして逃げ出すポール。警察で保護され母親に電話をするも、警察とマフィアが繋がっていたため再度マフィアに拘束されてしまう。
  金を払わないことに腹を立てたマフィア、ポールの右耳と写真を新聞社へ送りつける。
  母親は昔ポールが祖父からもらったミノタウロス像を売って身代金を作ろうとするも、単なる土産物品だった。
  新聞社は身代金の足しとして5万ドルを支払うので新聞に耳の写真を載せたいと母親へ打診。母親はお金はいらないので新聞を1000部とある場所へ送ってほしいと頼む。
  新聞の届け先は祖父の家。大風に煽られる新聞。
  ゲティ家の秘書オズワルド・ヒンジから母親へ連絡が入り、義父が身代金を支払うこと。そのためにロンドンへ来るよう言われる。
  打ち合わせの場所へ行くと、なぜか前夫も同席しているのを見て不審に思う母親。義父は身代金を税金のかからない範囲だけ支払うこと、そして監護権を元夫へと譲れと迫る。
  結局、税の関係で義父からは100万ドルしかもらえなかったゲイル。(この時、いつのまにか身代金が400万ドルに値下がってました)少しでも時間をかせぐため、400万ドル支払うことをマスコミの前で発表する。
  ロンドンに呼ばれるチェイス。祖父からカリフォルニアに建てている別荘の模型を見せられる。
  お金がないはずなのに、どうやって支払うかを知りたがる祖父。ゲイルを侮辱するような発言もする。チェイスは祖父の身辺警備から手を引くと宣言。
  ローマの空港で、祖父から身代金全額が届いたことを知るチェイス。電報には「金も子供もゲイルにやる」と。
  身代金の受け渡しにはクルマ(フィアット125)の上にスーツケースを2つ載せ、午後9時にハイウェーを折りて南へ。時速80キロきっかりで走行すること。クルマから降りることは禁止。窓に小石が当たったら、その場にクルマを停止させるよう指示が来る。
  フロントガラスが割れクルマを停止させるチェイス。草むらから現れた少年が、金を置いて1キロ先のスタンドで待つよう指示をする。金を数えたら電話をするから、と言い残し去る少年。トランクから金の入ったバッグを取り出し、道へ置くチェイスとゲイル。
  即座に金を回収しに来るマフィアの手下たち。
  おばさまたち総動員でお金を数えさせられている。金額を確認したマフィアはガソリンスタンドから3キロ先にある工事現場でポールを解放。チンクアンタは「パオロ、さっさと逃げてイタリアを出ろ」と小声で忠告する。
  チンクアンタの警告通り、工事現場から走って逃げるポール。その決断は正解で、実は警察がヘリコプターで追跡していたことを知り怒ったマフィアはポールを殺すよう命じる。
  ゲイルたちも工事現場へ行くもポールの姿はなかった。ポールが工事現場から町へと逃げたのだと推測し、後を追う。ポールは町まで辿りつくが、マフィアとの関わりを恐れる町の人々は彼を匿ってはくれなかった。
  あと一歩で捕まりそうになったところで、チンクアンタにより助けられるポール。無事に母親との再会をはたす。
  祖父倒れる。
  最後に購入した『聖母子像』の絵を抱えながら死んでいく祖父。「美しい…私の坊や」が最後のセリフ。
  資産は家族の公益信託となっており、お金を使えないことを知るゲイル。しかし投資はできるため祖父は物品に投資し美術品や骨董品を山ほど集めた。ゲイルの子どもたちは相続人のため、彼らが成人するまでゲイルが管理することとなった。
  ロンドンにある莫大な美術品はマリブの別荘へ運ぶというゲイル。チェイスには仕事を続けて欲しいと願うも「私のような人間は金を持つとダメになる」と断られてしまう。「あなたは家族よ」というゲイル。「ご親切にどうも」と答えるチェイス。
  沢山ある胸像のうち1つを凝視し、堪えてきた涙をこぼすゲイル。その像は誰あろう不敵な笑みを浮かべた義父のものだった。
  祖父のコレクションはゲティ美術館の礎となり、家族は遺産の多くを慈善事業に寄付。
  祖父が死亡。相続人である子どもたちの代理としてゲイルが義父の代わりをすることに

 

実際に、祖父ジャン・ポール・ゲティ氏が亡くなったのは1976/6/6なので。孫が無事に戻ってきたことは知っているようですね。映画だけ見ていると、孫の無事を知る前に亡くなってしまったのかな?と思っていたので。

あと、ポールの両親が離婚したのはWikipediaだと1964年になっていて、あれ、映画のなかの時系列と違うのかな??となりました。ポールの父親が再婚したのは1966年とも書かれていました。

登場人物

ジャン・ポール・ゲティ

 

 

 

自らをハドリアヌス皇帝の生まれ変わりと信じていたようです。

カリフォルニアに建設中の別荘も、ローマ皇帝の邸宅そっくりに造っているとチェイスに自慢してましたね。トイレだけは水洗だ、とも。

 

フレッチャー・チェイス

値上げ要求する相手に対し「では他社と取引したらどうです?」と交渉打ち切りを匂わせてみたり。モサッデグ首相を失脚させたと言われてました。首相が失脚したのは1953年の出来事だそうです。

もしフェルメールの絵を盗んだらバレるかしら?という母親に、「警報が鳴り犬が迫ってくる。その顔に傷がつく」と答えていました。その後、ゲティ邸に来たチェイスに犬が喜んで駆け寄ってくるシーンも。これは、彼がセキュリティを手掛けていたからだと後に判明。

3度結婚。1人めは兄に取られ、2人めはモデル、そして3人めとは最近離婚。子供はなし。

「金で愛は買えないが金があれば慰謝料は出せる」というチェイス。笑って頷く祖父。

チェイスの行動履歴

 

サウジアラビアで商談中にボス(以降、祖父と記載)からイギリスへ呼び戻される。
ポールをできるだけ早急に、かつ安く取り戻すよう祖父から命じられる。
ゲイルと共にローマへ。
ポールは狂言誘拐だったと判断し、イギリスへ行って祖父に報告。年末のボーナスアップを約束される。しかしローマでポールが戻ってくるのを待機するよう祖父から命じられる。
実際は狂言誘拐ではなかったことが判明し、自分の判断が誤っていたことを認める。
チンクアンタとの電話に出て、今までの経費20万ドルを支払うこと。その額なら脅迫罪にならない金額で、罪には問われないことを告げる。激怒したチンクアンタは電話を切り、母親からは「役立たず」と受話器で殴られる。
しかし本当は1ドルも支払う許可を祖父から得ていないこと。払うと言ったのは時間稼ぎで、「交渉から身を引くと思わせるのも交渉術だ」とゲイルに説明。
結局、犯人側から身代金を下げると連絡が入る。チェイスの作戦勝ち。
祖父が身代金を支払うと言い始めロンドンへ行くことに。しかし、チェイスは少々疑問顔。突然素直に支払うと言いだしたからには、なにか裏があるのだろうと思っていたのだと思われます。しかし喜ぶゲイルの手前、特には何も言わず。
チェイスの心配通り、祖父が黙って身代金を支払う訳はなく。前夫に貸し出す形にすること、子どもたちの監護権を譲ることを条件にしてきた。心無いやり方に、さすがのチェイスも首を静かに振らざるを得ない感じ。
犯人の要求額の四分の一しか手にできなかったゲイル。しかし犯人の要求額通り支払うことを発表するという。チェイスはゲイルの決断に「ゲティのような考えだ」と。これは度胸があるという褒め言葉なんでしょうかね。それともゲティのように危ない橋を渡ろうとしている、という心配だったのか。
記者会見に驚いた祖父から呼び出しをくらうチェイス。ロンドンとイタリアを何度往復させられているんですかね、かわいそうに。
ゲイルの発表に祖父が動揺していることを見抜くチェイス。「あなたの身辺は私が警護してる。番犬たちは私の部下が訓練した。警備システムも警備員も私が手配した。安全に暮らせるのは私のおかげだ」「それは辞職したいという申し出だな」「あなたは我々のことを”リスクの中で生きる者”と言った。バカな言葉だ。我々はリスクを冒してない。危ない橋を渡らず今の地位についた。あんたは、世界の誰より金持ちでもみじめなクソ野郎だ。さよならゲティさん」。

自分の身の危険を感じさせようとしたのか、もしかしたら孫の身に起きたことは、私がいなければあなたにも起こり得るんですよ、という警告(脅し)でしょうか。

ようやく祖父が身代金全額を準備したため、ゲイルとともに誘拐犯へとクルマで届ける。無事にポールを救出。それにしても、ポールはチェイスの顔を知らないから必死に逃げようとしてましたね。
ロンドンにある莫大な美術品はマリブの別荘へ運ぶというゲイル。チェイスには仕事を続けて欲しいと願うも「私のような人間は金を持つとダメになる」と断られてしまう。「あなたは家族よ」というゲイル。「ご親切にどうも」と答えるチェイス。

結局、ポールを救い、ゲイルを身近で助けたのは親族でも誰でもなく、チェイスだったというのがなんとも。

ジョン・ポール・ゲティ二世

「ほとんど会っていない」「俺に興味がなくクリスマスも誕生日も無視」と父との関係性を語っていたゲティ二世。

無職だったため、父親に連絡し仕事をもらうよう妻に言われ手紙を書くと「ローマに来い。仕事をやる」という電報が届き一家でローマへ。

そしてローマで父親に会うと、ゲティ・オイル社の副社長にすると言われ驚いちゃう二世。まさか、そんな大役を任されるとは思いもしなかったんでしょうねぇ。

 

父は一族を名門にしたいと願うも、二世は飲酒を節制できず麻薬にも手を出し家族を捨ててしまったんだとか。

二世にとっては、父親と離れていること、お金から離れることのほうが幸せな人生だったのかなぁ、とか考えてしまいました。でもゲイルからしたら、自分たち家族が路頭に迷うわけにはいかないわけで。そりゃ、強力なツテがあるなら父親を頼ればいいのに、って思いますよねぇ。

 

アビゲイル・ハリス

義父のセリフから地方判事の娘であることが分かりましたが、Wikipediaによると元水球のチャンピオンだったそうで。

「私の警護は不要よ。ゲティ家の者じゃない。私は一般人よ」というと、警察の人から「今は違う。資本主義の象徴だ」と言われてしまっていました。

広い家にお手伝いさんもいるのが一般かどうか、というのは疑問ながら。新聞社では2ヶ月家賃を滞納していると語っているので経済状況が悪化しているのは確かなのかな、と。

あと「時間をちょうだい。巨大な敵と戦ってるの」とチンクアンタに電話で話していました。まさか本当に祖父が身代金を渋ってるなんてチンクアンタを始め犯人たちは思ってなかったでしょうねぇ。

「新聞も誘拐犯も私にお金があると思ってる。それがいわゆる”信用”(クレジット)ってやつね……身代金があると公表するわ。400万あると言えば助けられる可能性が高まる」と決意するゲイル。

ゲイルは即決の人のように映画で描かれているように感じました。きっと彼女は常日頃から色々と考え、機会を逃さず決断し行動に移せる人なんだろうなぁ、と思わせる描かれ方というか。そういう意味では、むしろ元夫(二世)よりもゲティ家を率いるのに相応しかったのでは?と。

女だからとジャン・ポール・ゲティ氏は同じ土俵にあげようとはしてませんでしたが。

ジョン・ポール・ゲティ三世

ローマで町を歩いている時、あちこちから「パオロ!」と呼ばれる声がしたということは夜遊び常習犯だった、ということなのでしょうか。タバコも堂々と吸っていたし。当時16歳だったとは信じられませんね。

「ゲティ家の者は一般人とは違う」

「お前はゲティ家の一員だ。特別なんだ。誰にもだまされてはならない」

そう祖父から言われ育ったポール。いきなりお金持ちの世界へ放り込まれ、祖父から帝王学(?ゲティ学??)を学び始めたところで、また元の生活へ。彼なりに必死に祖父のあとに続こうとしていたのに、突然道が閉ざされてしまって。

あのまま彼が祖父の道を継いでいたら幸福だったのか?という疑問はあれど、孫を愛していながら(本人談)お金よりは大切ではないと祖父のせいで最大の恐怖を感じさせられながら助けを待っていた彼の気持ち……想像しても想像できないぐらいの壮絶さだなと。

「学校に火をつけて退学になった」といい、本の中に麻薬を隠し……。25歳のときに薬物を過剰摂取し、その後は体調の不調に悩まされつつ亡くなったと、ええ、これまたWikipediaに書いてあって。切なくなってしまいました。

自分は悪くないのに、いきなり命の危険にさらされるという。またあるかもしれない、という恐怖であったり、誘拐されたときの恐怖を思い出さない日はなかったかもしれない、とか色々妄想してしまうと切ない。

 

 

誘拐犯メンバー

ダンテ・アニャーナ 別名”チンクアンタ”。英語が話せる。
アルベルト・ラガナディ  
エットレ・パッツァーノ 33歳。ポールの用足しに同行し、うっかり顔をさらしてしまう。仲間に殺害され放置される。
ディノ・ボーヴァ  
フランチェスカ 料理を作る担当の女性。

全員がカラブリア州出身。カラブリアはローマから車で6時間ほどの場所だそうで。

チェイスはチンクアンタとの電話で「君の叔父(ピコリーノ)は昨日死んだ。同じ目にあいたいか」と言ってました。さて誰がピコリーノだったのかな。トイレしてた人??

あとでIMDbを調べたら、やはり最後にトイレしてた人でした。

 

あと謎なのは、チェイスが祖父に「2人は死亡、1人は逃亡中」って報告するんですよね。あれ、あそこで男性2人、女性1人が死亡してますよね。ああ、そうか。女性はマフィアとしての数に入ってないのか。

 

チンクアンタは、自分の子供がたとえ悪い子でも誘拐されたら金を払って取り返すとポールに語っていました。

だからポールを誘拐したんだろうなぁ。絶対親が支払うはずだ、誘拐されてお金を支払わない親がいるわけがない、と。確かに母親は支払おうとしていました。もし離婚時にお金をもらっていたら、それこそ全財産を支払ったと思います。

まぁ母親が支払わない or お金を持っていなくても、祖父は出すだろう、と踏んでいたんでしょうねぇ。まさか支払われないなんて。驚いただろうなぁ。でも、はい、じゃあポールは用無しなんで返します、なんて言えないしねぇ。

「俺たちは家族が一番大事だ。強い絆がある。俺は自分の家族のために人生を捧げる。人生の全てを」と言っていたチンクアンタ。警察に叔父を殺されたら、たとえ自分の刑を軽くするためであっても警察に協力しようとは思わないだろうしなぁ。

ポールが火事を起こして逃げ出したシーンでは、彼を見逃すようなそぶりをしてました。この辺りからポールに対して同情の気持ちを抱いていたことがうっすら表現されているのかな、と。

そして「俺はもう金なんかどうでもいい。ポールに死んでほしくないんだ」と言い、解放された場所から早く逃げるようにと忠告し、捕まりそうになったポールを救い「クソッ」と言って姿をくらましたチンクアンタ。マフィアにバレずに逃げられたのかなぁ。

人質になった人が犯人をかばうケースがあるなら、確かに人質に情が湧いてしまって助ける犯人というケースもあるのかな?なんて思いながら見てました。

ただチンクアンタが実在する人物なのかどうかは??この映画の、どこがフィクションなのか分かる資料があればいいなぁ。

 

 

秘書オズワルド・ヒンジ

秘書なんだけど、ものすごーく偉そうでしたね。自分のボスが偉いからって自分も偉いんじゃないのよー!!って言いたくなってしまうキャラでした。明らかにゲイルを下に見てる感じがねぇ。

ゲイル、最後にゲティ氏の王座(地位)についたときに彼をクビにしちゃえばいいのに、とか一人でプンスカしてました。

 

 

ナンシー

秘書。こちらはロンドンの邸宅にいる秘書なのかしら。何回かジャン・ポール・ゲティ氏を呼びに行くシーンで登場。

 

執事ブリモア

押しかけてきたポールの母親・ゲイルのバッグを持とうとして無視され、

「私を放り出す気?」と聞かれ「私の家なら追い返しませんが私の家ではないので…」と答えつつも、ズカズカ家に入っていく母親に「右です」と親切に教えてあげ。

イタリアへ電話をしたいというゲイルに「ゲティ様が設置したお客様の公衆電話を」。そして「小銭に両替します」と背広の両ポケットから両替えの入った袋を見せるブリモア。袋には5ポンドと書かれていました。

車の鍵を投げてよこすチェイス。しかし鍵を受け取りそこね落としてしまうブリモアもいまいしたね。なかなかに好きなキャラクターでした。主が偏屈なら、それに寄ってくる人たちも癖が強そうでブリモア苦労したんだろうなぁ、なんて勝手に妄想。

防風に飛ばされまくる新聞を、なんとか抑え込もうとしていたシーンが彼を見た最後かな?

最後、ゲティ氏が何度も彼を呼びますが駆けつけることはありませんでした。犬も居なかったし。高価な美術品に囲まれていながらも、自分を愛し気にかけてくれる人には囲まれることのなかった人生を象徴しているかのようなシーンだったな、と。

コルヴォ

捜査担当。めっちゃ活躍するのかと思ったら、そうじゃなかった。この映画は警察中心というよりチェイス&母親による犯人との交渉が中心でしたものね。

まぁ警察とは関わりたくないとチンクアンタが頑なに言ってたから。警察としても表立って動けなかったということもあるのかな。

2人めの誘拐犯:Mammoliti

そういえば、2人目の誘拐犯の名前は??と思ったけれど。字幕では出てこなかった気がするので。

IMDbで調べてみたら、Mammolitiとだけ書いてありました。マンモリーティ??

 

J・P・ゲティの名言?迷言?

劇中に登場する言葉

 

劇中には登場しない言葉

 

 

 

 

 

 

J・P・ゲティの物に対する執着

孫が偽装誘拐を企んでいたことに激怒するゲティ氏。自分が孫へ期待していただけに、その失望は大きかったようで。

「だから私は物が好きなんだ。オブジェや古代の遺品や絵画。目の前にある姿のままで決して変わらない。失望させない。美しい物に備わっている純粋さは人間にはない」とチェイスに語ってました。

でも孫に期待していたのは、優秀に育てれば他人にお金を支払わなくていいし、自分を裏切ることはないだろう、という身勝手なゲティ氏の考えだったんじゃないのかなぁ?なんて。

またゲティ氏が美術品を買い漁っていたのは、資産が公益信託となっていたためお金を使えなかったこと。しかし投資はできるため物品に投資し美術品や骨董品を山ほど集めたのだと最後に説明がありましたね。

うむ。よくわからない。仕組みが分からない。投資はできるけど、お金に換金はできない??

でもまぁ寄ってくるのは寄生虫のような人間たちばっかりだと思っていた節があるから。確かに失望させず、ただ美しくあるだけの存在に愛を注ぐ気持ちも分からなくもないというか。人間不信だったのかなぁ。

ミノタウロスの像

ローマで祖父に会ったときにポールがもらったミノタウロスの像。ミノタウロス像は多産と繁栄の象徴なんだとか。

「専門家によれば紀元前460年のものだ。美術館のクズならこれを得るため人も殺す」

「私がこれにいくら出したと思う?11ドル23セント。ギリシャの闇市場で買った。脚の悪い男が19ドルだと言ったが1時間かけて値切った。今競売に出せばおそらく120万の値がつくだろう」

「分かるな。どんな物にも値がある。値段を見極めるために人は苦労するんだ」

そう言ってポールに像を渡していましたが。

身代金の足しにしようと母親が像を売ろうとすると、サザビーの人から観光客向けの土産物だと言われてしまいました。そしてカピトリーネ博物館に行くよう言われる母親。博物館へ行き、実際に土産物としてミノタウロス像が15ドルで売られていることを確認し泣き笑うしかない母親。

このエピソードが表すものは一体なんだろう、とつらつら考えて。

個人的には、ケチなゲティがたとえ孫であろうと簡単に高価なものを渡すはずがない、ということなのかな、と。自分が渡す=安心して高値のものだと信じ込む、というのは危険だということを教えたかったのかな??

「お前はゲティ家の一員だ。特別なんだ。誰にもだまされてはならない」とポールに語っていたゲティ。だからって、孫を騙しちゃいかんのでは??

そもそも、そんな安物を彼が身近に置いておくだろうか?という疑問も。孫が来るからって、わざわざお土産を買っておくタイプではなさそうだし。

唯一私の中で納得するなら、”ギリシャの闇市場で偽物を掴まされた自分を忘れないためのミノタウロス像”だったりするのかな、とか。

ローマのホテルの室内には、買い付けたであろう絵画が無造作に壁に立て掛けてあったりしたし。物は美しいと言いつつも、どこかやはり投資という目でしか見てない部分もあったのかなぁ。どうだろう。

絵画

映画に出てきた絵画について書いていらっしゃる方がいました。

 

劇中、「フェルメールか。小さいな」というチェイスに対し「彼の絵は小さい」とゲイルは答えていたけど、そうかな、あの映画に出てきた作品は彼にしては小さいのでは??なんて思ったのは私だけでしょうか。ま、本編と関係ないからいいんですが。

あと、美術商のオットー(ラムとも紹介されていました)から「入手経路の問題から表に出せない」聖母子像の絵を購入していましたね。実際、彼のコレクションをもとに作られた美術館で盗難されたものが見つかり、美術品を返還しているという記述がWikipediaにありました。

この聖母子像の話が実際の話なのかどうかは分かりませんが、もしかしたらこういうことも本当にあったのかなぁ、なんて思わせる描写でした。

おそらく交渉前に散々ゲティから難癖?つけられたのか、美術商も「ゲームは終わりです。我々の提示額で了承していただかないと。支払いは現金で今日中に」と強硬な態度でしたものね。

結局は支払う意思を見せたものの、実物を手にして「やっと会えた。美しい子だ」からの、絵をヒョイっと裏返し「残念だが思っていたより状態が悪いな。150万の価値があるかどうか疑問だ」と最後まで値切ろうとするおじいちゃん。けれど、もう引かないと強気の美術商。

結局、聖母子像のゲームではゲティ氏が負けを喫したような気もしました。

J・P・ゲティの家族に対する想い

「私には大事な使命があるんだ。仕事で忙しい。家族の相手をして気疲れしていられない」

孫に手紙を読ませ、返事を書かせる。

「(ポールの偽装誘拐について聞かされ)血縁は信用できると思ったが」

「(ポールには)私が学んだ知識の全てを与えたかった。築いたもの全てを。だが父親同様、私の金を取る気だ。そうまるで私にまとわりつく寄生虫どもと同じだ」

ポールたちを含め4人の子どもたちの監護権を元夫へと譲るようゲイルに迫る祖父。その時の”してやったり顔”。えげつなかったですね。俳優さんの表情がすごかった。

「ゲイルの子供は私の子孫だ」「私のものだ。あの女が奪った」

ざっとゲティ氏が家族に関するセリフを拾いましたが。まぁ、もう自分本意というか。

そもそもゲティ氏自身が父親から見込みがないと言われたことに相当コンプレックスを感じていたようで。「父は私に見込みがないと言ったが見返してやったよ」というセリフがありましたし。

自分が大成功できたから、息子たちも大成功できるはずだと考えたのだったらどうなのかなぁ、と。これまたWikipediaによるとゲティ氏の長男は

会社運営の責任は全てまかされたが、49歳のとき、ストレスから自殺

とあるんですよね。

普通、そこまで追い込んでしまったのかと自分を責めたりしない、か。ゲティ氏は普通じゃないからこそ、あそこまでお金を儲けることに夢中になれたんだろうなぁ。

お金を儲けることが好きだからこそ、もっともっとお金が欲しかった、というのは他の人からしたら理解不能で人情みに欠ける言動になってしまったのかもしれないと思ってみたり。

J・P・ゲティのお金に対する考え方

「ルームサービスを頼む気になれないんだ。下着を洗ってもらうのに10ドルも払えない。自分で洗えば数リラですむのに。税金も控除になる。全てが控除の対象だ」

「父は私に見込みがないと言ったが見返してやったよ」

「私は孫を愛している。孫は全員愛しているがポールは…ポールは特別だ。万一のことがあったら困る。ローマに行き彼を取り戻せ。できるだけ早急に費用をかけずに」

離婚の話をしていたとき、ゲイルの弁護士が「監護権でゴネるのは金を値切るためだな」というと「時間はいくらでもある」という祖父の秘書。

「お金はいらない。扶養料も慰謝料も財産分与もよ。子供の監護権だけもらいたい」という彼女に「何だって?何を企んでいる?よく分からないがだまされている気がする」とまで動揺して口走ってましたね。お金を欲しくない人間が世の中に存在するのか?という感じ。

「まだ疑うの?財を築いただけあってあなたは安いか高いかを見抜けるはずよ。相手の弱みにつけこむのも得意」とゲイルに言われて、結局は孫を手放すゲティ氏。

そのくせ、「ゲイルの子供は私の子孫だ」「私のものだ。あの女が奪った」とつぶやいてました。つまり、お金を出せば取り戻せるとたかをくくっていたのかなぁ、なんて。

Wikipediaによると(そればっかり!)、

世界恐慌時には、全従業員を解雇した後、安く雇い直した。

というくだりがありまして。

あぁ、すべてはお金で解決できると。人はお金がなければ自分の要求を飲むしかないのだということを信じて疑わないんだな、と。そのおかげで、どれほど彼が恨まれていたかは想像したくないなぁ。

ゲティ氏なら地獄の閻魔様にも「お金を支払うから天国へ行かせろ」とかゴネてそう。いや、仏教徒じゃないから閻魔様には会わないか。

 

「どんな気分です?儲かったのを見て」とチェイスに言われ「今の私に金は何の意味もない。金など空気と一緒だ。いくらでもある。その気分も一時のものだが」というセリフもありましたね。

金はあって当然かぁ。私は物欲(といっても際限なくガチャガチャしたり、図録や展覧会のグッズを山盛り買ってみたいぐらいのもの)が強いから、ある程度お金があったら、その余裕の分だけ物を購入して満足しそうだけどなぁ。

あったら、あったで、また欲が出るんでしょうかね?でもお金あってもクルーザーや高級車が欲しい!という自分にはならない気もするし。ものすごいお金持ちになったら、ぜひ自分がどう変わるか見てみたいです。まぁ、そんなことないからこんなこと書けるんですけど。

 

身代金に関するゲティ氏の対応

身代金1700万ドルに対し「子供の身代金としては高すぎる」「私には孫が14人いる。金を払えば他の孫も誘拐される」
記者から「お孫さんの命に見合う金額とは?」と聞かれ「ゼロだ」

「”儲けるのは簡単だバカでも儲けられる。多くのバカが儲けている”。金持ちになるのは、それとは違う。金持ちになった人間は”自由”という問題に直面する。どんなことでもできるようになり大きな淵が口を開く。その淵が人や結婚生活をのみこんでしまう。特に犠牲になるのは子供たちだ」。

そう、子供たちですよ。あなたのお金で救える可能性の高まる孫の命が、支払わないことで危険が増してるんですよ?!って思いました。テロリストとは交渉しない、というのが現在の政府の対応に匹敵してるとか書かれてましたが。いやいやいや。国じゃないし。まぁ、どこぞの国家予算に匹敵しそうなぐらいの資産をお持ちだったようですが。

まぁ、裏ではチェイスに命じてなるべく早く、なるべく安く孫を救うよう命じてはいましたけど。牛丼屋さんかよ!

「(金が必要なのは分かっているが)だが黙って金を出すわけにいかない」そしてゲイルを交渉に関わらせるな、と。
ポールが傷つけられることを恐れるチェイス。身代金を払うように祖父に言うも受け入れない。「しかし今のあなたは世界の誰より金持ちです。」「無駄遣いする金はない」「どれだけ稼げば充分なんですか?」「もっとだ」
身代金は税控除の対象にはならないが、息子にお金を貸す形にすれば損金処理が可能と聞きようやく動き出す
ゲイルに子どもたちの監護権を元夫へ譲れば身代金を支払うという祖父。「最高の弁護士が揃ってる。法定で勝てないような提案はしない。ゆっくり考えろ。持ち帰って弁護士と一緒によく検討するんだ」と追い打ちをかける。
「お金は辞退したのに子供まで奪う気なの?」と必死に感情を抑えようとするゲイル。前夫に援護射撃を頼もうにも、前夫はゲイルと目が合わせられない。

結局、アメリカの税制度では控除できるのは100万ドル。400万ドルに身代金が値下がったとはいえ、到底足りないことに絶望するゲイル。ゲイルは100万ドルしかないにも関わらず、400万支払うことを記者会見で発表する。

驚いた祖父はチェイスを呼びつけ、「金はないはずだ。一体何をする気だ?金はどうする?誰かと寝てるのか?」「さすがに動揺したようですね」「生意気だぞ。さあ話せ。何をするつもりだ。お前とは契約がある。無理にでも言わせるぞ」

もう見事な下衆ですね。下衆下衆。ゲイルを馬鹿にするにもほどがある。さすがにいつもは冷静なチェイス、ボスには逆らってこなかったチェイスもブチ切れ。

とはいえ、それはゲティ氏から金を引き出すための演技でもあったようで。でもスッキリしただろうなぁ、本音を言えて。

 

ゲイルとチェイスの関係性

最初は険悪なムードだったゲイルとチェイス。しかし、結局ゲイルの身近で支え、協力してくれたのは全くの赤の他人だったチェイスだったという。

その点では、ゲティ氏がチェイスに命じたのは正解だったのかもしれません。ってか、チェイス氏は実在するんですかね??→こちらの記事にチェイス氏に触れた部分がありました。

An aide who’d flown in from Kuwait, Fletcher Chase – tall, silver-haired and distinguished, a pipe-smoking ex-CIA man who didn’t want to be photographed – handled the arrangements together with Jacovoni.

銀髪、長身、喫煙者で元CIA。そして写真と撮られるのが嫌いだったようですね。

Jacovoni氏というのは弁護士だそうです。つまりチェイス氏とJacovoni氏が解決に協力した、ってことでいいのかな。

新聞社でお金はいらないから新聞を1000部欲しい、というゲイル。彼女に(やるな)といった笑顔を見せるチェイス。

ゲイルとチェイスの出会いはイングランドにあるゲティ邸。
身代金は出さないと世間には発表したものの、やはり孫のことが心配な祖父はチェイスに取り戻すよう命じる。
「あなたはきっと有能なんでしょうね。ゲティ氏が雇ったんだから。でも元諜報員の力を借りずとも解決できる。1700万ドルのお金さえ手に入ればね」
身代金を払ってもポールが戻ってくる保証はないというチェイスに「マチスの絵を毎日変えるほどお金が余ってるのに」
「金銭は彼らが持ってない”何か”の象徴だ。その”何か”が何なのか知らずに交渉できない」
銃は持っているのか?という問いに「私は持たない。スーツの形が崩れる。銃は貧しいものが持つ」そして自分は取引や買収を持ちかけるのが仕事だ、と。
ポールが偽装誘拐の計画を立てていたことを知ったチェイス。「誰の味方?」と聞かれ「私は自分の味方だ」
遺体発見の一報を受け警察へ。「狂言誘拐と言って捜査放棄するなんて怠け者よ」「怠け者?愚か者なら分かるが怠け者とは」と抗議するチェイス。って、そこ??食いつくとこ、そこ??
「みんな何もしてくれない。助ける気がないのよ」と絶望するゲイル。
南イタリアにある犯人の根城を襲撃する際、チェイスは心配するゲイルの肩に手をかけて励ましていた。
交渉を打ち切るようなことを言ったチェイスに対し受話器でぶん殴るゲイル。しかしそれは交渉術で「交渉から身を引くと思わせるのも交渉術だ」というチェイス。
「私は身を引けない。あなたは家族がないからそう言えるのよ」ゲイルはチェイスが元諜報員であることも、家族が居ないことも、よくご存知ですな!
結局、犯人たちは身代金を値下げ。この辺りからゲイルはチェイスを信用し始めた気がしました。
義父からポールたちの監護権を譲るよう言われるゲイル。その様子を見ながら、そっと首を振るチェイス。流石にボスのやり方に呆れている様子。
犯人の要求額の四分の一しか手にできなかったゲイル。しかし犯人の要求額通り支払うことを発表するという。チェイスはゲイルの決断に「ゲティのような考えだ」。
記者会見に驚いた祖父から呼び出しをくらうチェイス。
ゲイルの発表に祖父が動揺していることを見抜くチェイス。「あなたの身辺は私が警護してる。番犬たちは私の部下が訓練した。警備システムも警備員も私が手配した。安全に暮らせるのは私のおかげだ」「それは辞職したいという申し出だな」「あなたは我々のことを”リスクの中で生きる者”と言った。バカな言葉だ。我々はリスクを冒してない。危ない橋を渡らず今の地位についた。あんたは、世界の誰より金持ちでもみじめなクソ野郎だ。さよならゲティさん」。

自分の身の危険を感じさせようとしたのか、もしかしたら孫の身に起きたことは、私がいなければあなたにも起こり得るんですよ、という警告(脅し)でしょうか。

ようやく祖父が身代金全額を準備したため、ゲイルとともに誘拐犯へとクルマで届ける。無事にポールを救出。
ゲティ氏が亡くなり、彼のポジションに座るゲイル。チェイスには仕事を続けて欲しいと願うも「私のような人間は金を持つとダメになる」と断られてしまう。「あなたは家族よ」というゲイル。「ご親切にどうも」と答えるチェイス。

 

ゲイルの「あなたは家族よ」というのは本音なんだろうな、と。ゲティ氏の命令で動いていたとはいえ、どうすればポールを救えるか考え実行し、ゲイルに寄り添ってくれたのは身内ではなくチェイスだったからこそ、そういったんだろうなぁと。

その後、ゲイルは三世を看護し看取り。どうされてるんでしょうか。

 

衣装・ロケ地

 

脚本家の言葉

 

 

 

 

 

原案

 

 

 

映画撮影に関する2つのこと

俳優の降板

当初ジャン・ポール・ゲティ役はケビン・スペイシー氏で撮影されていたところ、スペイシー氏のセクハラ行為により降板。

すべてのシーンをクリストファー・プラマー氏で撮影し、当初の予定どおりに映画を公開。9日間で撮影をし直すって、すごいですよねぇ。

一度終わった役を再度演じ直す俳優さんたちも大変だったろうなぁ。

 

ギャラ格差

そして再撮影の費用に関して、男女でギャラに格差があったことが発覚。

J・P・ゲティ氏に関する映画で、最後の最後にお金の問題が浮上してくるとは何て皮肉なんだろうと思ってしまいました。

 

実際のゲティ家の時系列

出典:Wikipedia(それ以外のときは別に記載)

1892/12/15 ジャン・ポール・ゲティ誕生
1903 弁護士だった父親が石油会社を設立して財を成す
1914 この年から父親の石油採掘業を手伝い始める
1932 ジョン・ポール・ゲティ2世が生まれる
1948 サウジアラビア、イラン、クウェートで権利を獲得し油田を開発
1950 石油やホテルビジネスなど関連会社で40社を保有
1956 フォーチュン誌で世界一の大富豪に選ばれる
1956/11 ジョン・ポール・ゲティ3世が生まれる
1960 3世の弟であるマーク・ゲティが生まれる。のちにゲッティイメージズの共同経営者となる。
1964 ジョン・ポール・ゲティ3世の両親が離婚
1966 ジョン・ポール・ゲティ3世の父親が再婚
同じ年にゲイルも再婚とこちらの記事に書いてありました
1971 ジョン・ポール・ゲティ3世は一晩かけて学校の廊下をペンキで塗りたくり放校処分となる
1971/7 ジョン・ポール・ゲティ3世の継母がローマでヘロインの服用過多により死去 ※1
1973/6
ジョージF.ゲッティ2世は48歳で自殺
1973/7/10 3:00am ジョン・ポール・ゲティ3世が誘拐される ※2
1973/11 新聞社にジョン・ポール・ゲティ3世の髪の毛と耳が届けられる ※3
1973/12/15 ゲティ3世がポテンツァ県ラウリーアの給油所で発見される
1974 ジョン・ポール・ゲティ3世が結婚
1975 ジョン・ポール・ゲティ3世に息子誕生(のちに俳優となるバルサザール・ゲティ)
1976/6/6 ジャン・ポール・ゲティ死去
1977 ジョン・ポール・ゲティ3世が耳の再生手術を受ける
1981 ジョン・ポール・ゲティ3世が薬物過剰摂取により肝不全と脳梗塞を引き起こす。殆ど視力を失うという後遺症を抱える。また転倒により頸髄損傷。※4
1993 ジョン・ポール・ゲティ3世が離婚
2003/4 ジョン・ポール・ゲティ2世が70歳で死去
2011/2 イギリス・バッキンガムシャーのワームズリーで母アビゲイルに介護されながらの長い闘病の末に54歳で亡くなる。

 

※1 こちらの記事には、ジョン・ポール・ゲティ3世が継母を薬物中毒の道に誘った的な書かれ方をされていました。どうなんでしょうね、父親も麻薬に手を出していたようですし、ゲティ3世が誘ったという明確な何かが残っているのでしょうか?

あとゲイルも再婚していたこと、その継父とゲティ3世の折り合いが悪く全寮制の寄宿舎に入れられた、と。

※2 こちらの記事に、脅迫文のやりとりは解放されるまでの約5か月間で計10回も続けられたと。

※3 耳を送りつけることを最終的に決めたのはゲティ3世だった、ということをこちらの記事で読みました。果たして、それが本当なのか個人的には疑わしいと思っています。家族が自分のために動いてくれないからと言って、自分の耳を切って欲しいというものなのだろうか。それとも、精神的に追い詰められてのことだったのだろうか、と。いずれにせよ私の憶測に過ぎないので、どこかでこの件についてはっきり書かれたものがあれば、とは思いました。

※4 この怪我の件で、ゲイルは3世のために月額28,000ドルの医療費を支払うよう2世を訴えたと英語版のWikipediaにありました。

Afterwards, his mother cared for him, and she sued his father for $28,000 a month to cover his medical needs.

 

ゲティ3世が語る自分自身のこと

ジョン・ポール・ゲティ3世が自分のこと、誘拐のことを語った英語の記事がありました。

インターネットで翻訳をかけてみましたが、学校の先生を怪我させたり、放火したことが書かれていました。あと誘拐時のことも。耳の件にも触れていますが、やはり自分から切ってくれと言ったとは書かれていないですね。

ゲイルと一緒に新聞社へ行ったのは Giovanni Jacovnoiという弁護士だという記述もありました。それにしても、郵便のストライキで3週間ほど配達が遅れたとか。もう、もう、もう、色んな意味で恐ろしすぎる。封筒を開けた人、絶対トラウマになっただろうなとか思うと、もうもうもう、本当に怖い。

そして写真は後日、別便で送付されてきたこと。

チェイス氏は銀髪、長身、タバコを吸う人で、写真嫌いということ。身代金はチェイス氏だけで運び、身代金の重さは1トン以上だったとか!うひー、1人で1トン以上を下ろすって、かなりの重労働ですよね。

1トン=1000キログラムってことは、10キロのお米の袋だと100回か。それを持ち帰るマフィアたちも大変?!

あと映画の中では1回逃げ出せたけど連れ戻されたというシーンが有りましたが、少なくともこの記事にはそういうくだりは出てきませんでした。監禁場所を何回も移動してるとも書かれていますが、誰かに売られたというくだりもなかったような?

何より切ないのは、母親には「なぜ支払いにこんなに時間がかかったのか?と聞いたことがない」というくだりでした。本当は叫びたいぐらいだったんじゃないか、掴みかかりたいぐらいだったんじゃないか。けれど、母親のせいではない、というのが彼にはハッキリと分かっていたというのが。もしかしたら、誘拐されていたときにラジオは聞けていたようだったので祖父が支払いを拒んだニュースが耳に入っていたのかもしれませんが……。

そして最後の最後。

解放された3世が祖父へお礼の電話をしたものの、直接祖父が電話にでることはなかったこと。祖父の側近を介しての会話になったと書いてありました。

祖父は怖かったんでしょうかね、なんでお金を払わなかったんだと罵られるんじゃないか?、もしくはどんなに怖い目にあったのか、まくしたてられるんじゃないか?なんて。

自分は鉄壁の守りのなかにいて、安全な場所で人々の弱みに付け込んで生きているのに。あぁ、そういえば、映画の中で3世に代筆させているエピソードも、今にして思えば伏線なんでしょうか。

病気の家族を助けて欲しいという見知らぬ人からの手紙を、にべもなく断っていたっけ。まぁ、他人に対して、失礼ながら本当かどうかも分からない相手に対してだから、まぁそう断るのも無理はないかな、とは思うものの。

可愛い孫のためにもお金を払わないとはねぇ。もし原案となった本を私が読んでも、あぁだから支払わなかったんだなという納得はできそうにないな、と思うのでした。

 

 

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コアラ
館ファン倶楽部の管理をしているコアラです。 週末は映画館か美術館にいることが多いので、家族からは「今日はどこの館(かん)へ行くの?」と聞かれるようになりました。 皆さんのお役に立てるような館情報を提供していけたらなと思っています。

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