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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』のネタバレと感想③

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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』のネタバレと感想 最終回です。

 

最初は、ネタバレあらすじだけを書こうとしたのですが。どうにもまとめきれなくて、というか。この流れで、あの過去の話をからめてくるのか、なるほど、という流れが見事だったのと。どの場面で、自分が何を思ったのか書き留めておきたくて、ついつい、全部書くことになってしまいました。

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』のネタバレと感想①

映画『82年生まれ、キム・ジヨン』のネタバレと感想②

 

話の流れ

ジヨンの家

ジヨンの母が急いでジヨンのところへやってきます。

ソファに座って呆然としているジヨン。

「会いたかった」というジヨンに「全部嘘よね?」「何が?」

娘を抱きしめる母に「お母さん、なにかあったの?」「いえ、何もないわ。あなたに会いたくて寄ったの」

 

「お母さんが近くに越してきてアヨンの面倒を見るわ。働きなさい。お母さんが力になる」

そう言ってくれる母親の手を触っているジヨン。母親の左手人差し指に、ミシンでできた傷をなでています。

「やりたいことをやって……もう帰るね」

そういって帰ろうとした母親の背中に「ミスク」と呼びかけるジヨン。

振り向く母親。母親である自分を、娘が名前で呼んだので驚いています。

「やめて。あなたは花盛りの頃、兄さんたちを支えるために工場でミシンを回してた。あなたがやつれた顔で給料をもらってくるたびに胸が張り裂けそうだった」

ついに実の母親の前でも、別人格になってしまったジヨン。

「私の優しい娘」

そう言われた母親の目にも涙が。

「あなたがミシンでケガした時、母さんは身を切られる思いだった。あの時、抱き締めてやれず感謝の言葉すら言えなかった。ごめんね。ジヨンなら辛くても頑張れるはずよ。強い子に育てたでしょ」

目の前で起きていることに驚愕しつつもジヨンのところへ戻り「私の子。私の大事な子。私のいとしい子」と抱きしめる母親。

「デヒョン君、ジヨンはどうしてしまったの?ジヨンはなぜこうなってしまったの?」泣きながらいう母。

黙ってうなだれるデヒョン。

「ジヨン、かわいそうなジヨン。どうしたの、ジヨン。かわいそうなジヨン」と泣き崩れます。ジヨンは疲れたのか目をつぶって反応はしません。

 

ジヨンの実家

母親の部屋に入る手前の壁に、家訓とかかれた掛け軸が下がっているのが気になります。

それはいいとして。

いきなり店を閉めて欲しいと母親に呼び出され、思いつめた様子でジヨンの家へ向かった母親を見ているジソク。帰宅した母親はベッドに横たわったままです。

帰宅したウニョンは母親に何かあったのか?と問いかけますが返答がありません。ジヨンの家族に何かあったのか?と聞いても無言。

 

そこへ父親が漢方薬を持って帰ってきました。

抽出液って袋に書いてありますね。高麗人参っぽいイラストも描かれています。

「これは精力のつく薬だ、お前が飲め」と息子にいう父親。

それが聞こえた途端、母親が憤怒の表情で部屋から出てくると漢方薬の入った箱を床へぶちまけます。

「こんな物!なぜいつもこうなの。息子しか眼中にないの?娘はやりたいこともできず衰弱してる。健康な息子にだけ漢方薬を買ってくる。それでも父親?」

驚く父親。

部長の息子が漢方医院を開いたから、とか答えちゃいます。

「分からない?」

このときの、気持ちがわかってもらえないもどかしさを地団駄踏むように体全体で表現していた女優のキム・ミギョンさんの演技が心に残りました。

ミギョンさんの演技、すごかったなぁ。ふだんは穏やかで何でも受け入れてくれるお母さんで、どこか諦めた感じすら思わせる演技ながら。感情が爆発した時は、今まで秘めていたやるせなさや、切なさなどの感情の深さ、重さを感じました。

「だったらジヨンの漢方薬を買ってくるべきでしょ。こんな親だから、あの子は病気になった」と泣き崩れます。「かわいそうなジヨン、気の毒でたまらない、あぁ、ジヨン、ジヨン…」

父親は1人ベランダに出て携帯を手にするとチョン部長へ連絡し、漢方薬の調合を頼みます。「娘の分だ」と。

 

喫茶店

日曜日にヘスを呼び出したジヨン。

ジヨンが体調悪そうに見えて心配しています。

ベビーシッターが見つからないこと、夫が育児休業してくれると言ったが義母が猛反対したこと。だから再就職は無理みたいだ、と。

「ジヨン、不公平だと思わない?妻だけが仕事を諦めるなんて。出産は仕方ないけど、育児は夫と分担できる」「そう甘くはない。義母の言うとおりよ。私は夫ほど稼げないし、それどころか…保育園代やシッター代にもならないかも」

黙って一口飲み物を飲むと「やるせないわね」とつぶやくヘス。

本当に、やるせない……。

ジヨンの自宅

娘をお風呂に入れたジヨン。しんどそうに溜息をつきました。

今は働けないとチーム長に言うつもりだ、というジヨンに、デヒョンは何か方法を探してみようと提案します。

「ないわ。再就職前に疲れ果てた」

「なら今回は見送ろう。君も少し休んだほうがいい」

「育児が”休み”だとでも?」

「……そうじゃなくて……」

「よくないと思いながら、こう勘ぐってしまう。あなたも私の再就職を望んでなくて、育休も気が進まないのではないかと」

「僕は育休をそれほど深刻には考えていない。君のための決断だ」

「”君のため”と言わないで。その言葉を信じられない。みんな結局、ひと事のように考えてて私だけが闘ってる」

「ジヨン、落ち着いてよく聞くんだ。通院を勧めただろ?君は……具合が悪い」

「何を言ってるの?そう言えば気が楽になる?私のどこが?」

「ジヨン、君は……たまに別人になる」

そう言って、デヒョンは映画の冒頭で医師に見せた動画をジヨンに見せます。

 

まったく身に覚えのない自分の言動に驚くジヨン。

立ち上がり、しばらく窓の外を見ていました。泣き出すジヨン。

え、デヒョン、こここそは抱きしめるべきでは????

ジヨンは着席すると「私はまず何をすれば?治療を受ければいい?」とデヒョンに聞きます。

強い。強いなぁ、ジヨン。強いからこそ、弱い自分を許せなかったのかなぁ。弱音や辛さを吐けず自分だけのなかにギュウギュウに押し込めていたのが、あの症状を生み出してしまったんだろうか…。

「アヨンがまだ幼くてよかった。変に思われずに済む」「そう頻繁じゃない。ほんのたまにだ」「心配をかけたわね」「いや僕はただ、君を失いそうで……僕が君をここまで追い詰めた気がして…」泣き出すデヒョン。

まぁ、そうだよね。1人産めばいいよ、なんて簡単に言ったからね。憂うつだと言っていたジヨンの言葉を真剣に聞かず、産めばジヨンも子供の可愛さに心配もなくなるし、親たちもおとなしくなる、そんな感じだったもんね。

1人産んだところで、また2人目は?とか聞かれるのに。ジヨンはそれを知っていたから、そうなると完全に職場復帰は難しくなるし。”とりあえずビール”みたいな感じで、とりあえず1人で済むわけはないことを分かっていたからこそ、憂うつだったんだろうなぁ。

ああ、あったなぁ、そういうこと。あっちでも、こっちでも聞いたなぁ……思い出すと憂うつになるなぁ。私の母が、1人めを産んだばかりの私の友人に2人目は?って聞いたとき血の気が引いたなぁ。それも悪気がない、というところが。事情があって、ようやく授かったお子さんだと聞いていただけに辛かったなぁ。

自分の娘は子供どころか結婚もしてないでしょ、って言って黙らせてしまったけれど。

デヒョンも辛かったとは思うけれど。医者と相談して、この動画を見せていいのか?とか確認すればよかったのに。素人の同僚の無責任な発言(本人が自覚したら、症状が重くなる。刃物を振り回すようになる、とか)を信じて、見せてこなかったわけだし。

まあ、無理やり引きずってはこないようにとは医者から言われていたのかもしれないけれど。

ジヨンの実家

お惣菜を沢山作り、ジソクに持たせる母親。

車を運転しながら父親に電話して、ジヨンの好物を聞いてみると”あんパン”だという答えが帰ってきました。

 

ジヨンの家

到着したジソクから荷物を受け取るジヨン。

「このパンは?」と聞かれ、嬉しそうに「食べて」というジソク。

ジソクがビニール袋いっぱいに、あんパンを買ってきたようです。

「手土産を持ってくるなんて珍しいわね」というジヨン。ジソクはビニール袋から1つパンを取ると姉に手渡し、1つを姪っ子のところへ持っていきます。

しかし自分と同じで、娘はあんパンが好きじゃないというのです。自分の好物はクリームパンだ、と聞いて深い溜息をつくジソク。母親の言う通り、父親はジヨンのことを見ていないということが分かってしまったのかも。

ジソクはコートのポケットから四角い箱を取り出し「やるよ」と姉に手渡しました。

箱の中身は万年筆。

「いいの?」「今度もっといい物をくれ」「バレバレよ」

ちょっとこのバレバレの意味が私には取れなくって。どういうことなのかな。海老で鯛を釣ろうとしてるな?みたいな意味なのか。

「もう帰る」そう言ってアヨンに手をふるジソク。

「食事していって」「約束がある。……健康でいろ」「珍しく私の心配を?」

「ありがとう」というジヨンに「次はクリームパンを」といって帰っていきました。

うっ。ジヨンの言う通り、いい男に育った。ウニョンのおかげだね。ううう。どう接していいか悩みながらも、なんとか姉を元気づけたいというジソクの気持あったかい。

万年筆には”キム・ジヨン”という刻印が入っていました。

 

精神健康クリニック

ついに診療を受けることにしたジヨン。

医師に「やっと会えました」と言われ「そうですね。自分の状態に気づかなかったんです」「指摘されて驚いたでしょう」「……怖いです」「治療をするに当たって一番難しいのは患者を来院させることです。ここに来ただけでも治療は半ば成功したと言えます」

私、この言葉聞いたら泣いちゃうなぁ。

「それを聞いて少し気が楽になりました」

だよね、うんうん。

ジヨンの家

ふと洗い物の手を止めると窓の外には雪がちらついていました。

母親に電話をするジヨン。

ご飯を食べたのか?と互いに確認したところで、ふいに訪れる沈黙。

ジヨンが口を開きます。

「あなたが生まれた日、桜の花びらが散ってた。破水して病院へ向かう途中、きれいに舞い散ってた。ぼたん雪のようだった」

「私はお母さんに似たのね。私が出産した日は雪が降ってて、かわいい娘が生まれた」

そう言って電話を切るジヨン。

母親は電話を切ると、胸に電話を抱きしめました。このシーンも良かったなぁ。

 

オフィス

2019年3月18日、14時30分。

祝 起業のお祝いを持ってチーム長の会社を訪れるジヨン。

オフィスの扉に”春風”と社名が書いてあるのを見て「チーム長らしくない」と笑います。

忙しそうに働く社員たち。

「会社の名前はどう?”春風”よ。私に合ってる?」「すごく」「ウソつかないで」笑い合う2人。

座って飲み物を飲むジヨンに「どうしてお客様モードなの?」と聞くチーム長、否、社長。

「鋭いですね」「どうしたの?話して」「再就職は無理です」「シッターの問題?」「はい」

溜息をつく社長、ならばパートタイムはどう?と。

「難しいです。実は精神科に通ってます」「今のご時世、珍しくも何ともないわ」「外回りや会議の時に変なことを口走りそうで」と笑顔で言うジヨン。

「働けるくらいに回復したら連絡します」

静かにジヨンを見つめる社長。

社長も内心、やるせないと思ってるのかなぁ。自分は実母に育児を任せることができたけれど、それでも男社会の中で女性で生き抜くのは大変だっただろうし。もしかしたら、こういう女性を何人も見てきたのかもしれないし…。私の勝手な妄想ですけど。

 

精神健康クリニック

誰かの母親、誰かの妻として、時に幸せを感じるから、この生き方も悪くないようだ。しかし、ふと閉じ込められている気分になるというジヨン。

「出口が見えたと思ったら、また壁が立ちはだかっていて他の道にも壁が現れる。”最初から出口はないんだ”と思うと腹が立つんです。でも悟りました。自分が悪いんです。出口を見つけられる人もいるのに。私は能力がないから……脱落したんです」

 

「なのに、なぜ私だけ…」

「以前、腹が立った時どうしました?」

ジヨンの家

パソコンをどけ、ノートを開くジヨン。

万年筆を手に取ると、”キム・ジヨン”と書き出しました。

 

喫茶店

娘を連れて飲み物を買いに来たジヨン。

品物を受け取るために並んでいると、後ろに並んでいる会社員3人がこの店は子供が多いだのブツブツ言ってます。

ジヨンが飲み物を受け取ろうと手を伸ばしたところで、娘がむずがってコートを引っ張ったたため飲み物が床に落ちてしまいました。

飛び散る冷たい飲み物。

今まで、アヨンは温かいものしか飲んでないのですが、なるほど、ここは子供にかかっても大丈夫ですよということで冷たいものにしたのかな、とか。

でも誰も拭くのを手伝ってくれようとはしません。お店の人も忙しいのか出てこないし。

「本当に迷惑だな、家で飲めばいいのに」「”ママ虫”だな」とか言い始める会社員たち。

「ちょっと。私を知ってるの?私が”ママ虫”?なぜ私が虫なの?」「あなたに言ってない」と見苦しいことを言い出す男性。

「じゃあ誰のこと?ここに来て、私を見てから10分も経ってないのに何を根拠に私を悪く言うの?私がどんな経験をして、どんな人に出会い、何を考えてるか知ってるの?私もあなたを評価しようか?」

「はっ、何を言ってるんだ。仲間内の話だ」「なら聞こえないように話して。なぜむやみに人を傷つけるの?」

仲間が、放っておきましょうと男性を連れ出します。

精神健康クリニック

「それでスッキリしました?」

「いいえ、スッキリはしませんでした」

笑っちゃう医者。

「でも…悪くはなかった」

笑顔で小さくうなずく医者。

 

交差点

デヒョンと信号待ちをするジヨン。

「デヒョンさん、もう春ね。新芽が出ているのが見える?」

涙ぐむデヒョン。

「どうしたの?泣き虫ね。私は大丈夫よ」

 

児童公園

滑り台を滑り終わりデヒョンのところへ走ってくるアヨン。大きくなりましたねぇ。

 

ジヨンの家

ポストに入っていた大きな封筒を取り出し、さっそく中身を取り出してエレベーターに乗り込むジヨン。

「少女が成長して」というタイトルで文章を書いたようです。嬉しそうに見つめるジヨン。

Littorという韓国で実際にある文芸雑誌のようですね。

帰宅するとパソコンに向かい入力していくジヨン。

”彼女は1982年4月1日ソウルの産婦人科で身長50センチメートル、体重2900グラムで生まれた。当時、父は公務員で母は主婦だった。”

タイピングの音ともに暗転。

エンディング曲

 

 

ゆらゆらと私の心は なぜ こんなにも揺れるのだろう

ひとしきり吹いてかすめていく 風にすぎないのに

 

 決して揺るがない

 

 

ABOUT ME
コアラ
館ファン倶楽部の管理をしているコアラです。 週末は映画館か美術館にいることが多いので、家族からは「今日はどこの館(かん)へ行くの?」と聞かれるようになりました。 皆さんのお役に立てるような館情報を提供していけたらなと思っています。

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