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映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の感想

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

現在公開中の『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』を観てきました。

1度観終わると、「あれ、あのシーンって……」、「あれって、もしかして!」とか色々と思い返すのが楽しくて。それを確かめるために、もう1度観たくなる。そういう映画でした。そして、『デダリュス』という小説を読みたくなりました。劇中に出てくる本ではありますが、面白そうなんですよねぇ。出版されないかしら?!

まだ1度しか観てないので見落としや、考え違いをしている部分もあるかもしれませんが、感想を書いていきたいと思います。

 

あらすじ(ネタバレなし)

世界的に大ヒットしている小説『デダリュス(DEDALUS)』のシリーズ最終巻が発売決定。違法流出や海賊版が出回ることを回避するため、原文のフランス語だけでなく世界同時に多言語での翻訳版も出版すると発表された。

すでに発表されている2巻の販売部数が多い国(言語)から選抜された翻訳家たちが、出版社の社長の指示でフランスにやってくる。

翻訳される言語は9つ。

ロシア語、イタリア語、デンマーク語、英語、中国語、ポルトガル語、ギリシャ語、スペイン語そしてドイツ語。(残念、日本には翻訳されないようです!まぁ、フィクションですが)

そして翻訳家たちは、小説のファンであるロシアの富豪が提供したという豪奢な邸宅で作業を開始することに。ただし、彼らが作業するのは邸宅の地下にある核シェルター。

携帯電話など外部とつながる通信機器は没収され、シェルターから出ることは許されず、共同の作業場でのみ小説の原稿を見ることが許され、翻訳に使うパソコンも作業場からの持ち出し禁止。

厳重に漏洩防止対策がとられた環境下で翻訳作業が進められているにも関わらず、「冒頭の10ページをインターネットで公開した。これ以上、公開されたくなければお金を支払うように」という脅迫メールが出版社の社長のもとに届く。

果たして犯人は、誰なのか?どうやって翻訳を流出させることができたのか?犯人を捕まえることはできるのか?

 

映画のもとになった実話

この映画の予告をご覧になった方は、

『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズ出版秘話に基づく

という言葉を目にされたと思います。

そう、各国の翻訳家たちを一同に集めて地下室で翻訳をさせる、ということが実際にあったんだそうです。

ダン・ブラウンさんが書いたロバート・ラングドンが主人公のシリーズ。

『天使と悪魔』に始まり『ダ・ヴィンチ・コード』、『ロスト・シンボル』、『インフェルノ』、そして『オリジン』が現在までに出版されています。

翻訳家たちが監禁(!?)されたのは4作目の『インフェルノ』が出版されるときのことだそうです。もちろん、翻訳家さんたちは事前に厳しい管理下で翻訳作業をすることを知らされていたとは思いますが。

フランス、スペイン、ドイツ、ブラジル、イタリアから集められた11人の翻訳家たちが、イタリア最大の出版社であるモンダドーリのミラノ本社地下室に閉じ込められ、約2ヶ月にわたり新しい小説を毎日翻訳していたそうです。

11人は携帯電話を持ち込むことを禁じられ、武装した警備員によって警備されていたといいます。そして監視された共有コンピューターを介してのみインターネットへのアクセスが許可された、と。

食事はモンダドーリの社員食堂で食事するようになっていたそうです。

以上の情報は、下記のページをグーグル先生の翻訳してもらったものなので違っていたらごめんなさい。

登場人物

 

エリック・アングストローム 出版社の社長
カテリーナ・アニシノバ ロシア語担当
ダリオ・ファレッリ イタリア語担当
エレーヌ・トゥクセン デンマーク語担当
ハビエル・カサル スペイン語担当
アレックス・グッドマン 英語担当
イングリット・コルベル ドイツ語担当
チェン・ヤオ 中国語担当
テルマ・アルヴェス ポルトガル語担当
コンスタンティノス・ケドリノス ギリシャ語担当
ローズマリー・ウエクス 出版社の社員。翻訳家たちのお世話係でもあり、監視役でもある
ジョルジュ・フォンテーヌ フォンテーヌ書店の店主

あとは、いかつい警備員の方々。

ネタバレしつつ感想

映画を最後まで見て、最初のシーンから映画を思い出してみると「ああー!」という場面がいくつもでてきて面白い作品だなぁ、と思いました。

ここから先はネタバレを含みます!未見の方はご注意ください!

 

 

オープニング

私は書斎が燃えているのかな?と思いながら見ていました。のちに、そこがフォンテーヌ書店であることが分かります。

誰かの声で、子供のころマジックのトリックが気になってマジシャンにタネ明かしをせがみ、必ずタネを聞き出すことに成功した、といったナレーションが。

最後までみると、それはアレックス・グッドマンの声だったんだな、と。そう、彼は小さい頃からトリックに興味があり、だからこそ、あのような計画も綿密にたてることができたんだろうなぁ。

ブックフェア

ドイツで開かれたブックフェアで、出版社の社長であるエリック・アングストロームが『デダリュス』シリーズの第3巻にして最終巻となる「死にたくなかった男」を、世界同時出版するという内容を発表。

12月から翻訳作業を開始し、確か3月には出版というスケジュールだったような。

集合まで

空港

翻訳家の人たちがフランスへと向かうシーンからして、ドキドキしました。テンポも早いし、一体これからどんなことが待ち受けているのだろう?と。

まずはデンマーク語担当のエレーヌ・トゥクセンが登場。コペンハーゲンの空港で旦那さんに「(翻訳は)家でできる仕事だから結婚したのに」「子どもが可愛そうだ」などと愚痴られながら出発。そりゃ、3人の子供の面倒を1人で2ヶ月みるとなると、愚痴のひとつやふたつやみっつはこぼしたくなるでしょうけど。でも、何も出発間際まで言わなくてもねぇ…………。

そんな旦那さんに「状況が変わるわ」と答えるエレーヌ。そう、確かに変わってしまいましたよね……。

ポルトガルのリスボンでは、テルマ・アルヴェスが猛スピードで空港を駆けています。彼女は、いつも時間に追われてる感じですね。
やっとのことで搭乗手続きのカウンターへ到着すると、これまた忙しげに電話にでます。電話の相手に「2ヶ月フランスで仕事をする」と告げたかと思うと怒り出す彼女。どうやらウェイトレスの仕事をクビになったようです。

彼女がウェイトレスだった、という設定は公式ホームページで知りました。お店には無断でフランスへ行こうとしてたんでしょうかね??

最後の空港のシーンはフランス。空港に到着するなり「オスカル・ブラックとパリで会う」とツイートするイタリア語担当のダリオ・ファレッリ。視線の先には彼を待つドライバーと、すでに到着しているギリシャ語担当のコンスタンティノス・ケドリノスの姿。ドライバー兼警護担当者は、いきなりダリオの携帯電話を取り上げます。何もここで取り上げなくても!と思いますが、ダリオは、すぐに自慢話?をSNSで発信してしまう、と危険視されていたのかも??

まぁ、性懲りもなくダリオは2台めの携帯を取り出してましたが。

リムジン

翻訳作業をする場所までは豪華なリムジンで移動のようです。フランス・パリの北駅前のベンチでリュックサックを枕代わりに寝ている青年。それが英語担当のアレックス・グッドマン。運転手に起こされると、リムジンへと乗り込みます。

車内には先客が2名。真っ白なコートを着て、感極まったような表情を見せるロシア語担当のカテリーナ・アニシノバ。その横には中国語担当のチェン・ヤオが座っています。

カテリーナが『デダリュス』の登場人物であるレベッカと同じような洋服を着ているのを見て、アレックスやチェンは驚いていたのでしょうか。それとも彼女の美しさに見惚れてしまったのでしょうか。男性陣が、密かに視線を交わします。

翻訳場所へ

翻訳家たちが集められたのは、いかにも贅沢な造りのヴィレット邸。
入口で出迎えたのは出版社の社員であるローズマリー・ウエクス。

各自に広い部屋が与えられ、のんびりと庭の景色を楽しみながら翻訳なのか…と思いきや。いきなり本格的な荷物検査と身体検査が実施され、警備員たちの厳めしいことこの上なし。
携帯電話など外部と連絡が取れる通信機器は容赦なく没収され、ボイスレコーダーすらも没収。ダリオが持っていた2台めの携帯電話もあっけなく没収されます。

ローズマリー曰く「ここにいた痕跡を残せない」と。

ここのあたりで、アレックスとチェンが自己紹介をしてチェンが20年パリに住んでいることが語られます。

翻訳家たちの日々のスケジュール&住居環境

朝9時から20時まで週6日、常に監視された状態で1日20ページずつ翻訳を進めるというスケジュール。日曜日のみ休み。

映画の冒頭で、ポルトガル語担当のテルマが「フランスで2ヶ月仕事をする」と電話で話していたので、契約は2ヶ月ということでいいのかしら。
本文は全部で480ページだったかな、だから翻訳だけでも480÷20=24日間。日曜日が4日間あるとして、28日。残りの1ヶ月で文章の推敲するというスケジュール。

インターネットへの個人での接続は禁止。ただし、プールやトレーニングマシーン、ボウリング、見るのに一生かかるほどの映画コレクションを自由に楽しむことが可能。各国の新聞も毎朝届くとか。

朝食は8時、昼食13時、夕食は21時。専属のコックさんが作るかなり豪華なお食事と、夜はお酒付き。

出版社の社員であり、翻訳家たちのお世話を担当するローズマリー曰く「皆さんの寝室は私のアパート全体と同じ広さ」で「バスルーム付き」と紹介していました。

シェルターなのに、ものすごく豪華な作りですよね。ロシアの富豪は、かなり大人数で避難することを考えていたんですねぇ。しかも、電気も水も結構使いそう。

通常は1人で翻訳作業を進めていくのが翻訳家なのに、いきなり大部屋でやるというのも、周囲には武装した警備員たちが取り囲んでいるという状況も、かなりやりづらそうですよねぇ。

時系列と準備

映画では時系列を入れかえることで緊張感と謎が深まるように設定されていたと思います。では、時系列通りにするとどうだったのか?を考えてみます。

1 アレックスは自分には才能があることをジョルジュに証明したいと小説『デダリュス』を執筆し、ジョルジュに読んでもらう。
ジョルジュは才能に驚き、是非出版すべきだとアレックスを説得。ジョルジュの教え子だったアングストロームが社長をつとめる出版社から『デダリュス』は出版され世界的大ヒット。
2 小説が売れたものの、その宣伝の仕方などに不満を持つアレックス。ジョルジュはアレックスの気持ちを汲み、自分に任せて欲しいという。(これが、第1巻出版後なのか、第2巻出版後なのか、第3巻の原稿を渡す直前なのかは私には不明でした)

同時に、ジョルジュは『失われた時を求めて』という本を持ちながらだったと思うのですが「誰が出版しようが本の面白さは伝わっている」ということも言っていたような。

3 最終巻の原稿を手渡すから、とジョルジュはアングストロームを自分の店に呼び出す。今まで通り自分の出版社から出版できると信じきっているアングストロームだったが「君とはもう仕事をしない」とジョルジュに断られる。

支払金額の上乗せを提案するも断られ、怒りと欲に駆られたアングストロームはジョルジュを階段から突き落とす。そして最終巻の原稿を手にすると、店に火を放つ。

4 ジョルジュの突然の死に驚いたであろうアレックス。犯人はアングストロームではないかと疑い、どうやったら彼の罪を立証できるか計画を立て始めた(はず)。
準備 ドイツのブックフェアに取材のカメラマンとして潜入するアレックス。(泣いてましたね。確かに、予告編を見返してみるとカメラで顔が見えないけれどカメラマンが最後尾にいるのが確認できました)
準備 『デダリュス』の第1巻(もしくは第2巻まで?)の英語版翻訳をアレックス自らインターネット上にアップ。その翻訳の素晴らしさでファンの注目を浴びる。そしてアングストロームの注意も引くことになり、逮捕されたアレックスとアングストロームはイギリスの警察内で面会することに。この件がきっかけとなりアレックスが第3巻の英語版を担当する道筋ができた模様。
準備 アングストロームが脅迫に応じなかった場合に備え、『デダリュス』最終巻を全ページ自ら英訳しておく。
準備 英語以外の翻訳家たちを調べ、誰なら協力してくれそうか見当をつける。
準備 他の言語の翻訳家たちに接触し協力をこぎつける。翻訳家たちのなかに犯人がいることをどうやって匂わせるか、翻訳家たちとシナリオを作って打ち合わせ。翻訳場所に集合したら、そのシナリオ通り行動することに。
準備 翻訳家たちと協力し、アングストロームから最終巻の原稿を入手(ただし、本当は盗んでいない。アレックスが自分の書いた原稿を皆に見せただけ)
準備 アレックスはイギリスにダミーの部屋を借りる。(この部屋には洗面道具がない、という理由で本当は別のところに住んでいるのではないか、とローズマリーに見破られる)
準備 アレックスがイギリスに借りている本当の部屋にあるパソコンのセッティング。まずはクリスマスにアングストローム宛に1通目の脅迫メールが届くように。そしてアングストロームが脅迫に屈しなかった(送金をしなかった)場合、自動的に次の脅迫メールがアングストロームの元へ届くようにセッティング。

この部屋にも踏み込まれた場合に備え、ローズマリーへのメッセージとして写真を置いておく。(アレックスは、ローズマリーが社長の指示でイギリスへ来ることを予測してたんですね。そして、ダミーの部屋にローズマリーは騙されないかもしれない、と。流石!)

5 フランスで翻訳家たちが集合
6 翻訳開始。クリスマスに1通目の脅迫メールが社長のもとに届く。
7 脅迫に屈しない社長に、次の脅迫メールが。翻訳家たちだけしか知らないことがメールに書かれているため、犯人は翻訳家のうちの誰かだと確信した社長。翻訳家たちの寝室を警備員たちに調べさせたり、犯人が名乗り出るまでは電気も食事も供給しないという非情な態度を見せる。
8 追い詰められた社長は、犯人へ8000万ユーロを支払うことを決意(1ユーロを¥120で換算すると96億円!)

翻訳家たちに銃を取り上げられそうになり、社長がカテリーナを銃撃。さらにはアレックスにも銃を発砲。アレックスは直前に胸にしまっていた本『失われた時を求めて』が銃弾を止めてくれたおかげで命拾い。

常軌を逸した社長の行動に、ついには警備員たちも見限り去っていく。

9 1通目の脅迫メールが届いてから2ヶ月後には、刑務所で社長とアレックスが面会(てっきり、脅迫犯が捕まって社長が面会に来てるのかと思ったら!なんと、逮捕されていたのは社長だと分かったときの驚きときたら!)

そのときには、もう第3巻が発売されている。ただ、それがどの言語で発売されたのかは私は見落としてしまいました。社長が持っていたのはフランス語版?英語版?

10 何回目かの面会で、アレックスは自分こそが『デダリュス』の作者であることを告げ、混乱した社長の口からついにジョルジュ殺害を自供させることができた。

 

自分が核シェルターに監禁されるまでに、かなり準備をしなくちゃいけなかったアレックス。そりゃ初日から翻訳作業をせずに爆睡しちゃうわけだな、と。お疲れ様でした。彼にとっては、初日までの仕込みですべてが決まってくるわけですものね。

それにしても、翻訳家たちに原稿を盗むと信じ込ませるためにスーツケースすり替え(と見せかけて、本当はすり替えてない)を実行した場面。あれ、スーツケースが間に合わなかった場合、例えばコピー機が故障とか、コピー機が誰かに使われちゃってたとか、交通渋滞がひどかったりとか、そうした場合は、すべてが水の泡ですよね。スケボーがなかったら、絶対間に合ってないですよね。日本製のコピー機が有能だって褒められてたシーンに、ここで日本が参加するとは思わなかったなぁと笑ってしまいました。そして、スペイン語担当のハビエルがなぜ骨折していたのかも、ここで明かされます。

ただ、アレックスの想像しなかったこと(カテリーナが撃たれてしまうことなど)もありアングストロームを自白させることができるかどうか、かなりヒヤヒヤしていたと思われます。

アレックスの計画では、ある程度したら自分が犯人であることを名乗り出て社長と1対1で話し合いに持ち込もうとしたのでしょうか。本来の計画も気になるところです。

正解を答えたはずなのに、なぜ?

ここから先は、アガサ・クリスティの小説『オリエント急行殺人事件』のネタバレも含みます。お気をつけください!!

少年時代のアレックス。母の再婚相手がフランス人だったため、夏の休暇中だけフォンテーヌ書店がある町へやってきます。

フォンテーヌ書店で本を万引して出ようとすると、店主のジョルジュ・フォンテーヌに呼び止められるアレックス少年。
彼は小説の続きが気になっていて、それで本を万引しようとしたと告白します。

店主は聞きます「『オリエント急行殺人事件』の犯人は誰か?」と。それに答えられたら、本を持って帰っていい。もし間違えたら、店を手伝いなさい、と。

私は映画を観ているときには分かっていなかったのですが(!)、万引しようと思った本が『オリエント急行殺人事件』なんですね。

てっきり店主は、彼が本を読むことに本当に興味があるのかどうか、常日頃から読んでいるのか試したのかと……。ほら、すごく『オリエント急行殺人事件』って有名な作品だから。

で、アレックス少年は少し考えてから殺人事件の犯人は「全員」と答えるんですよね。

そうそう、犯人は全員なんだよねぇ、あれにはびっくりしたなぁ、なんて思ってたら店主が「じゃあ本を並べて」みたいにアレックス少年に言うわけです。つまり、答えを間違えたからお店を手伝うように、ということですよね。

ええー?!

彼の答え間違ってる??と。

レジス・ロワンサル監督の答えは、下記のツイートのリンクをクリックしてくださいませ。

ただし、監督の答えの中には映画本編のネタバレが書いてありますのでご注意ください!

 

まだ結末を読んでもいないのに、犯人が全員であるということを導き出したアレックス少年。その推理力の凄さに、ジョルジュは少年の才能のきらめきをみたのかもしれません。きら〜ん(なんじゃそれ)。

『デダリュス』の作者

『デダリュス』を書いたのはオスカル・ブラックという人物、ですが、世間の人には顔写真も公開されず、どこの誰かも分からないという設定。

出版社の社長であるアングストロームだけがブラックと接触でき、ブラックの本当の姿を隠すためにものすごいお金を使った、というセリフがありましたね。

そう、そして社長だけが知っているブラックの本当の姿。それは、かつての恩師であり、今は小さな書店を営む店主のジョルジュ・フォンテーヌ。

ところがどっこい、ジョルジュは本当の作者ではないという。

本当の作者はジョルジュのもとで本屋の手伝いをするうちに文学の才能を開花させた、アレックス・グッドマンだったという。アレックスは、ジョルジュに自分には才能があることを証明したいがためだけに『デダリュス』を書いたというのです。

『デダリュス』を読んだジョルジュはアレックスの才能に驚き、そして出版するように強く勧めるのでした。自分にはツテがあるから、と。そのツテがアングストロームなわけですが。

あまりにもジョルジュに出版を勧められ、ついにはアレックスも譲歩します。ただし、自分の名前ではなくジョルジュの名前で出版してほしい、と。
最終的には社長がオスカル・ブラックというペンネームをつけて出版されることが決まります。

だからこそ、社長はジョルジュさえ抹殺してしまえば安心して第3巻を出版できると判断したんでしょう。「オスカル・ブラックとの交渉はタフなものでしたが勝ちました」なんてことを言ってたぐらいですから。

『デダリュス』シリーズは最終巻だし、今後オスカル・ブラックが新作を発表しなくても「いや、本人が書きたがらない」とか「もう書くのをやめたそうだ」とか好き勝手に言い訳できますものね。

出版社社長エリック・アングストローム

『デダリュス』の世界的ヒットにより、社長のアングストロームは”作者を知る唯一の人物”ということでかなりチヤホヤされたんでしょうか。本の売上も入るし、ロシア語担当のカテリーナを口説いたように女性関係も派手になったのかも??

『デダリュス』出版前は、真面目に文学と向き合っていたからこそジョルジュが出版を任せたのに。”金の卵”を手にしたら、もう真面目に文学を売り出すのが馬鹿らしくなってしまったのでしょうか。読者、というか、買い手が多ければ多いほどよい、とばかりに興味を持ってもらうためなら作品の意向とは違う宣伝方法もしたのかもしれません。

カテリーナ曰く「金儲けのために低俗な紹介」をしたと。

『デダリュス』最終巻のタイトル「死にたくなかった男」とは、まさに彼のことだったんじゃないかと思えてきました。
「この結末を、一番最初に君に読んで欲しい」と言ってジョルジュは社長に原稿を渡しましたよね。果たして、どんな結末だったのか。

アレックスから、原稿が漏れた本当のトリック=アレックスが本当の作者であることを聞かされ、そして「お前から盗むものなど何もない」と言われます。裸の王様だったであろう社長には、その言葉ほど恐ろしいものはなかったのではないでしょうか。

「自分のものは、自分で守れ」と社長は何回か言いますが、名声もお金も、すべて自分の本当の力ではなかった、と。どこかで、そういう気持ちもあったかもしれませんが、きっと認めたくない、このポジションを失いたくないという気持ちの方が勝っていたからこそ、小説が売れることだけに心を配ってきたのではないでしょうか。

彼が文学に、作者に、翻訳家に敬意を払い続けていたら、こんな結末にはならなかっただろうに……。

ロシア語担当:カテリーナ・アニシノバ

『デダリュス』のヒロインであるレベッカに心底入れ込んでいるカテリーナ。翻訳できるのは名誉だ、とか、翻訳中に泣いていたり。レベッカの服装をしているのは、自分にとって戦闘服だから、というセリフがあったような。あのくだりも、もう1回みたいなぁ。

社長の『デダリュス』への扱いに不満を持ち、「いつか後悔する」と言ってましたね。

続きを読みたい一新で、スケベ社長に呼び出されたスキを狙って原稿の入ったスーツケースの鍵まで開けてしまうあたり、まるでスパイのようでした。

翻訳家たちを事前に調査した、と言ってたからアレックスもヒヤリとしたのかもしれません。いや、むしろアレックスは自分が調査されていることも知っていて、だからこそ仲間には誘わなかったのかしら??

自分が生み出したヒロインに、ここまで感情移入する人物に出会ってアレックスはどう思ったのかなぁ。過剰ではあるけれど自分の作品を深く愛し、理解しようとしてくれるカテリーナに恋心を抱いたのかも。

果たして彼女は病院で目を覚ましたのでしょうか。彼女には物語の結末を読んで欲しいなぁ。そして、アレックスととことん小説について語って欲しいなぁ。

デンマーク語担当:エレーヌ・トゥクセン

アレックスに次いで一番背景が描かれたのがエレーネでしょうか。
警備員たちに自分の部屋を家探しされたときに見つかった自作の原稿から、本当は作家になりたいという彼女の願望が明かされます。

しかし社長から無残にも「小説家の才能はない」と断言されたことで、自分でも薄々感じていたことが確定してしまいます。社長、デンマーク語できるんですね。

自分は子どもを産むつもりはなかったけれど、旦那さんが子どもを欲しがったこと。家事と子育てで自分の時間が取れず小説が書けない苦悩、子どもと離れても寂しいという気持ちにならないことを翻訳家たちに涙ながらに語っていました。

彼女は自分に作家としての才能がないことを認め、同時に家族のもとへ戻る気持ちも持てないことに悲観して自らの生命を絶ったのではないでしょうか。自分の夢である”作家になりたい”という気持ちは自分の作品さえ生み出せば状況が変えられる、と。だからこそ、今回の翻訳の仕事を引き受けることで自分一人の時間が持て小説を完成させ自分の夢を叶えたい、と。

彼女は誰かを喜ばせる作品を作りたかったと言ってました。旦那さんを喜ばせたくて子どもも生んだ、と。旦那さんは嬉しかっただろうけれど、でも奥さんが望んではいなかったことを知らないんだろうなぁ。そして、知ることはなかった訳で。彼女が亡くなったいまとなっては、もう知らないほうがいいのかもしれません。フィクションですが。

そして、彼女の自殺に動揺する翻訳家たちにアレックスが言うんです。「遅かれ早かれ、こうなった」的なことを。
もし、社長に才能がないと言われなかったとして。今回、彼女の小説が完成して。でも、おそらく彼女の小説は世の中に発表されることもなく、彼女は唯一の希望を失くし人生に悲観することになるだろう、と。
たとえ自殺という形を選ばなくても、自分の喜びのために生きることにはならないだろう、ということまで考えたのでしょうか。

そこまで予測できちゃうアレックスでさえ、追い詰められた社長が銃を持ち出すことまでは予測できなかった訳で。いやはや、社長ひどすぎる。

 

劇中で使用された曲

クリスマスの夜、翻訳家たちとローズマリーが夕食を共にします。そのときに歌われたのが

ジャッキー・デ・シャノンさんの『What the World Needs Now』。

実は、この曲を歌うこともアレックスのシナリオ通りだったとは!

 

個人的には、ここがもう少し詳しく知りたかったなぁという箇所

動機

まずは、アレックスが他言語の翻訳家たちに接触し協力を仰ぐ場面。
ちょっと私にはテンポが早すぎて、翻訳家たちがアレックスに協力する動機みたいなものが完全には理解できなかったので、ここの時間をもう少しだけ長めにとってくれたらな、と。

映画を観終わって時間をおいて考えると、アレックスに協力することで得られる彼らのメリットってなんだろう?と。翻訳家たちへの冷遇、文学を軽んじる社長への仕返しというのは恐らくベースにはあって。あとは自由な表現についてとか、馬鹿にされたことへの仕返しができる、みたいにそれぞれの不満にうまく話をもっていったアレックスの手腕というか。

でも、脅迫して自分たちだってバレたら翻訳料も入らないし、その後の人生にも大打撃。そうなったら身も蓋もないわけで。

犯人は自分1人だとアレックスが名乗り出る、という大前提のもとに話が進んでいたのかしら?とか。ちょっと、そのへんが理解できていない私。

それにしても、アレックスはどうやって味方になりそうな人を選んだんでしょうか。一番は、やはり地理的なことのように思えます。
フランス在住のチェン、スペイン、ポルトガル、ドイツ。

ギリシャ、ロシア、デンマークの人たちは地理的な遠さに加え、性格だったり家庭の事情だったりで参加してくれなさそうだし。イタリアに至っては、絶対社長に言いつけるだろうし。

 

ローズマリー

もう1つは社長とローズマリーの関係性。端々に社長から叱られ馬鹿にされてるローズマリーの姿はあったものの。『デダリュス』の流出を恐れる社長がパソコンを壊すようローズマリーに命じますが、その命令に背くのが社長に叱られている?自分の写真を見たとき、というのが……。分からないわけではないけれど、この写真はいつのときに叱られているものなのだろう?というのが。写真と同じシーンがあったら、さらに効果的というか腑に落ちたというか。私が見落としただけなのかな。

写真は彼女の気持ちのなかでは最後の引き金であって、今まで溜まりに溜まっていたもの、社長が文学を単なるお金儲けとしてしか扱っていないとか、自分への馬鹿にした態度などへの堪忍袋が切れたというのは十分伝わるのですが。ちょっと、あの写真では唐突に感じてしまって。

例えば、社長が『デダリュス』最終巻を高らかに発表した、あのブックフェアの会場でローズマリーが叱られたシーンがあったら、アレックスが写真を撮るチャンスもあったし、って納得できたのになぁ、というのが個人的な感想です。

音楽担当は三宅純さん

リオ・オリンピックの閉会式で、少し不思議な”君が代”が流れたのを覚えている方もいらっしゃると思います。

その”君が代”のアレンジを担当されたのが三宅さんだそうです。
当時の映像は、こちら。”君が代”は1:35ぐらいから流れます。
残念ながら、映像が非公開になってしまいました。

映画のサウンドトラックは、すでに発売中。

映画『タイピスト!』もおすすめです

『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の監督・脚本を担当したレジス・ロワイヤルさんが長編映画として初めて監督したのが『タイピスト!』。

この作品もまた、最後の最後まで目が離せません。Amazonプライム会員の方は現在無料で見られますので、興味のある方は是非。

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コアラ
館ファン倶楽部の管理をしているコアラです。 週末は映画館か美術館にいることが多いので、家族からは「今日はどこの館(かん)へ行くの?」と聞かれるようになりました。 皆さんのお役に立てるような館情報を提供していけたらなと思っています。

POSTED COMMENT

  1. 大福餅 より:

    コアラ様
    私もこの作品、とても興味深く鑑賞しました。
    観終わってすぐに再鑑賞したくなりましたが叶わず、あれこれと頭の中で伏線回収作業をしていましたが、「あれ?あの場面はどういうこと?」とモヤモヤし、ネット検索していてこちらのサイトに導かれました。
    とてもわかりやすく説明されていて、時系列もスッキリ!素晴らしい解説をありがとうございます!

    • コアラ より:

      大福餅様 コメントありがとうございます。
      私も1度しか見てないので勘違いしている部分もあるかもしれませんが、お役に立てたのであればとても嬉しいです。
      時系列を巧みに前後させることで、さらに謎が謎を呼ぶ感じでとても面白い作品だったなぁ!と思います。

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