ようやく連休1つめの展覧会へ行ってきました。
【円覚寺の至宝 鎌倉禅林の美】は工芸・絵画・彫刻など幅広い展示品があり、かつ鎌倉時代の美術の特徴の一端も知ることができ興味深かったです。
円覚寺の境内には国宝に指定されている舎利殿や洪鐘(おおがね)もあるとのこと。機会があれば、実際にお寺へ行ってみたいと思いました。
Contents
円覚寺について
お寺の読み方は「えんがくじ」だそうです。
今からおよそ700年前の鎌倉時代後半、このお寺を建てるために土を掘っていたら、石の箱がでてきたんですって。フタを開けてみたら、そこから「円覚経」とよばれる中国・唐時代のお経がでてきて、みんなビックリ。そこから「えんがくじ」と呼ばれることになったそうよ。
円覚寺ホームページより
開山:鎌倉時代後半の弘安5年(1282)
開基:鎌倉幕府第8代執権・北条時宗
開祖:中国・宋より招かれた無学祖元(むがくそげん)禅師
目的:国家の鎮護のため、禅を広めるため、そして蒙古襲来による殉死者を敵味方の区別なく平等に弔うため
展示について
展示室1 無学祖元の「開山箪笥」
「開山箪笥(かいさんたんす)」とは、無学祖元が持っていたと言われる中国・元時代の中国製の品々(一部、日本製)のことを指すそうです。
堆朱や堆黒も展示されているのですが、それらが鎌倉彫の源流とされているそうです。
ものすごく簡単に違いを説明するならば堆朱や堆黒は漆を塗ってから彫り、鎌倉彫は模様を彫ってから漆を塗る、ということでいいのかしら。
酔翁亭堆黒盆
内側に彫られている模様も美しいのですが、外側(器のふち)にも模様が彫られていました。
椿梅竹堆朱盆
とても艷やかな表面で、本物の濡れた葉っぱが置かれているのではないか??と思うほどでした。松竹梅ではなく、椿梅竹なんですね。
花菱亀甲蒔絵合子
展示室1に展示されている作品で、この作品以外はすべて重文指定なのですが。なぜ、この作品も重文にならないのだろうか!!と個人的には思うぐらい素晴らしい色味と模様でした。
表面に小さな亀甲文が1つだけであったり、2つ並べて、3つ並べてなど配置されているのですが。その配置の妙!美しさに見とれておりました。
菊枝紋団扇
団扇と書いて”だんせん”と読むそうです。この団扇の形が、今まで見たことのない形状だったもので、一体、どこを、どう持って使うのか??と、しばらく考えておりましたが結論がでませんでした。柄の部分が、ぐにゃりと曲がっているのです。房みたいなのが途中でついていて。うーむ。謎です。
袈裟環(けさがん)
展示品だけを見ると、はて?どう使うのだろうかと思いつつ。展示を見ていくと無学祖元の彫刻が左肩の前あたりで袈裟を止めるのに使っている、あの金具なんだな、と。
払子
本来インドでは蚊やハエを追い払う道具。法要に際して威儀を示すために持つ
虫を追い払う道具が、いかにして威儀具になるまで出世(?)したのか。この払子は柄の部分が屈輪(ぐり)紋になっていました。私は今まで、器でしか屈輪紋が使われているのを見たことがなかったので斬新に感じました。
黒角製香合
蓋の部分に「日出」「扶桑」「樹」の文字が浮き彫りになっていました。扶桑の文字が一番大きかった記憶があります。
扶桑樹(ふそうじゅ)は東方のはてにある巨木のこと。日本を扶桑国ということがある
そうなんですね。知らなかった。知らないことばかりだ……。
展示室2 円覚寺の名品
『青磁袴腰香炉』が展示されていました。
中国の祭器「鬲(れき)」を模したという三本足の美しい青磁でした。金継ぎしてある箇所までもが美しい。
説明に「砧青磁を代表する名品」とありまして、はて砧青磁とは?
中国青磁の一種で南宋時代に龍泉窯で作られた青磁のうち粉青色の上手(じょうて)のものを砧手(きぬたで)と呼ぶ。
展示室3 大用国師・釈宗演老師大遠諱関係 特別展示
遠諱(おんき)というのは、50年ごとに行われる祖師の法要のことだそうで。
大用(だいゆう)国師
江戸時代後期、一時期衰退していた円覚寺を立て直した中興の祖。平成31年は大用国師の二百年遠諱にあたるそうです。
大用国師というのは諡名で、誠拙周樗(せいせつ しゅうちょ)が本名とのこと。不昧公や円山応挙とも交流があったそうです。
釈宗演(しゃくそうえん)老師
明治時代に禅を世界に広めたとされる方で、平成30年は百年遠諱にあたるそうです。
三井記念美術館の公式ホームページで写真付きで紹介されている狩野栄信筆/誠拙周樗賛『霊照女図』と、釈宗演筆『墨蹟 「画禅入三昧」』は5月21日(火)からの展示です。
展示室4 [Ⅰ]円覚寺の華厳禅と舎利信仰
達磨大師坐像
袈裟を頭部まで覆いながらまとい両手を衣で隠して坐す〜中略〜体部の凸凹に沿って表された衣の皺など鎌倉〜南北朝時代の特徴をそなえる
観音菩薩立像、地蔵菩薩立像
顔つき、表情、なで肩で両足を開きぎみに立っているところなど類似点が多いとのこと。足元を見ると、靴の爪先部分の靴底が見えるように表現されていて(つま先部分が、くるんと巻き上がっている感じとでも申しましょうか)、そこの表現方法が面白いなぁと見ていました。
観音菩薩立像
衣の部分が、なにやら盛り上がってる感じがして「はて?目の錯覚??」と思いましたら。こちらは”土紋(どもん)”という立体的な模様なのだそうです。
中世の鎌倉地方特有の技法。型抜きした土製の文様を表面に貼り付け、浮き彫り的な視覚効果
なるほど。本当に貼り付けているんですね。それにしても、よく大部分が剥がれ落ちないで残っているなぁと感心。一体、どんなもので貼り付けているのでしょう。土だからひび割れて落ちてしまいそうなのに凄い技術だなぁ。
この立像の下には獅子が一頭いまして。口を開け、はーはー言いながらも頑張って観音菩薩様を支えている様子が微笑ましかったです。
仏牙舎利記
”仏牙”というのは、仏の歯を指すそうで「数が少なく珍重されてきた」と。円覚寺にはこの仏牙を祀っている舎利殿があり、国宝に指定されているそうです。
展示室4 [Ⅱ]鎌倉宋朝禅の蘭渓道隆と無学祖元
蘭溪道隆坐像
黒目の部分には水晶が表面から嵌め込まれているそうです。通常は、像の内側から玉眼をすることが多いそうなので、珍しいなぁと。
私のメモには「額にくっきり皺3本。足元の靴がキラキラしてて可愛い」とあります。もっとみるべきところ、メモるべきことがあるのじゃないかと自分でも思いました。
無学祖元坐像
”曲彔(きょくろく)”という椅子に腰掛けていらっしゃるのですが、椅子に肘掛けのようなものがあり向かって右に竜、左には二羽の鳩の像が乗っていました。この竜と鳩は鶴岡八幡宮の使者で、中国にいる無学祖元に日本へ来てくださいとお願いしている場面を表しているとか。
ちなみに、こちらの像の足元の靴はシンプルでした。
展示室4 [Ⅲ]大陸文化との交流①彫刻・絵画
観音菩薩遊戯坐像
遊戯?遊んでらっしゃる??と思ってしまいました。
”ゆうぎ”ではなく、”ゆげ”と読むのだそうです。
遊戯坐像は中国で宋代以降に流行。片足を屈し、反対の足を下ろして坐る像。バリエーションとして片手を地について体を支え、あるいは片方の足を立て膝とするものが多い
大辞林で”遊戯”を調べてみますと
仏、菩薩、また悟りの中にいる修行者が、自由自在にふるまうこと。
日本では、この観音菩薩遊戯坐像のように右足を倒して坐す作例が主流とのことでした。まことに優美なお姿でした。
地蔵菩薩坐像(仏日庵)
地蔵菩薩坐像は展示室に2つありましたが、仏日庵の地蔵菩薩坐像。まるで生きていらっしゃるかのように感じました。
手には錫杖を持っていらっしゃいます。その錫杖の先が衣服についているのですが、まさに錫杖の重みで凹んだかのような表現で、錫杖の先がついている部分だけ凹んで彫られ、そこを中心に衣服の皺が彫られているのです!って私の下手な文章では、まったく想像できないと思いますが。もし現地に行かれましたら、ぜひご覧くださいませ。
展示室5 [Ⅲ]大陸文化との交流②書跡・青磁器・漆器
前机
机の脚が猫脚のような優美なカーブを描いていたのが印象的でした。
屈輪紋大香合
”大香合”という名前の通り、今まで私が見たなかで一番大きな香合でした。インパクト大。
響銅鋺(附 朱漆托・盆)
響銅は”さはり”と読むそうで、銅と錫の合金、叩くと良い音で響くそう。見ただけでは、金属っぽくない気がして。一体、どんな音がするんでしょう。
青磁算木文香炉
算木文とは易の八卦や和算の計算用の棒を模様化したもの
なるほど、だから外側に☰とか☵のような模様があったのですね!青磁の色も美しかったです。
展示室7 円覚寺派の展開
高峰顕日坐像
神奈川県鎌倉市にある正統院を創建されたという高峰顕日という方が手に”竹篦(しっぺい)”を持っていらっしゃる坐像なのですが。その竹篦で「こら!」と一喝されそうな迫力がありました。
銅造阿弥陀三尊像
日本最古の仏像と言われている長野・善光寺の本尊を模して作られたそうです。はて、善光寺の御本尊は絶対秘仏ということで見ることはできないはず。では、どうやって模したのかしら??と思ったのですが。Wikipediaを見ると「善光寺式阿弥陀三尊」は鎌倉時代以降に各地で盛んに制作された、と。仏画などから、その特徴を取り入れて作られたのかなぁ、と。
いままで、1つの像に1つの光背があるものしか見たことがなかったので。三尊の背後に大きな光背が1枚でおおっているというスタイルに驚きました。
毘沙門天立像
兜をかぶっている毘沙門天立像ですが、なんと兜は着脱可能で、髪の毛の筋もちゃんと彫られているそうです。見えない部分でも、ちゃんと彫っているとは。そのお写真を見てみたかったなぁ。図録にはあったのかしら。(今回は図録を購入しなかったので確認できませんが)
雪村周継の絵
雪村の絵は、どれも個人的に好きな作品ばかり。5月21日からは『竹に鷺図』が公開されるそうです。
映像ギャラリーにて「禅の道」
展示室の入口前にある映像ギャラリーで「禅の道」という映像が流れていました。
雲水になるところから、日々の修行についての解説があります。
簡単にメモをしてきたのですが、聞き間違いなどあるかもしれません。
入門
掛搭者(かとうしゃ)と呼ばれる修行を希望する方は、自分が修行したいお寺へ行き自分が修行をしたい旨を告げるのですが何度も何度もお寺の方から断られてしまうとか。「うちはいっぱいなので、○○(別のお寺の名前?)へ足元の明るいうちにどうぞお回りください」。しかし、そこですぐ帰ることなく手をつき低頭し待ち続けることで自分の熱意を表すそうです。時には何日も許されないこともあるそうで。
入門前の時点で私は挫けてそうです。
剃髪
もう剃る髪の毛がないのではないだろうか?と思うほど細かく細かく剃る姿が。
朝の身支度
起床時間が何時だったのか、時計が映っていたのに時刻を見忘れてしまいました。起床の合図があってからの皆さんの動きが早すぎて。ものすごい速さで布団を丸め、各自の寝床の上にある棚へしまう姿のなんと高速なことか。
外では1つのバケツに水がはられており、そのバケツを取り囲むようにして一人ひとりが柄杓で水をすくい洗顔されていました。つまり。冬も。水なんですよね。たぶん。
朝課
皆さんでお経をあげている姿が。かなり大きな木魚に目が奪われました。
粥坐
食事も修行の一環。お経を唱えつつ各自食器を取り出してました。食事中は音をたてることは禁止だそうです。たとえ、たくわんが出ても音を立てることは禁じられているそうです。難しい。
坐禅
大昔、一泊二日の坐禅会に参加したことがあるのですが。なかなか集中できず、警策で叩かれるんじゃないかと怯えていたのを覚えています。
「人生いかに生きるかを指し示す羅針盤が坐禅」と説明がありました。
茶礼
お茶の時間は、皆さんでわいわい楽しく!と思いきや、やはりそこも静かに。1つのやかんのお茶を皆さんで飲んでいました。甘い物はあるのかしら、と思ったらミカンが一人1つ配られたようでした。
掃除
部屋はもちろん、お手洗いもピカピカに磨き上げるそうです。
作務
薪割り、洗濯、畑仕事。自給自足が僧堂では原則だそうです。
托鉢
自らの慢心を取り除くために托鉢をする、と説明がありました。
饂飩供養
一番ホッとした、というのもおかしいのですが。普段の食事では音を立てることを禁止されているけれど、うどんを食べるときだけは致し方ない、ということで皆さん豪快にすすっておられました。
開枕(かいちん)
インターネットで調べてみたところ、”開枕”は”開被安枕”の略だそうです。被はふとんのことで、ふとんを開いて、枕を安んずるの意味だそうで。
就寝時間は21時。朝と逆で、ものすごい速さで棚から布団を取り出し寝ていました。寝るときも作法があるそうです。
驚いたのは、シーツとかマットレスなんぞないこと。布団を横に二つ折りにして、そのなかに挟まるように寝ていました。なんというか、柏餅みたいな感じといいましょうか。しかも、お隣の方とはもうギリギリの近さ。板間の上で痛くないのだろうか、夏と冬ではせめて布団は変わるのだろうか、など気になってしまいました。
禅問答
雲水ひとりひとりに公案(こうあん)が与えられるそうです。いかに自分が、こだわり、妄想、固定観念に縛られているかを教えてくれる、とのこと。
餅つき
諸仏へのお供えとして、餅つきも一心不乱、無言で作業されていました。掛け声のある餅つきに慣れている私としては、水をつける人は掛け声なしでも怖くないのだろうか、とか。高速餅つきじゃないから大丈夫なのかしら。
開浴
お風呂に入るのは4と9のつく日に限られるそうです。(はて、なぜ4と9なのでしょう?)
脱衣場には「禁高談戯笑」の文字。お風呂に入るのも修行。体と心の汚れを取る勢いでこするそうです。
以上のような修行を日々続け、師の許しがなければ永久に雲水として修行することになるそうです。果たして、一番長いとどれぐらいの月日なのでしょう……。
下記のホームページに、禅に関する用語集がありました。
いろんな用語があるものだなぁ、と。