本当は、東京国立博物館・平成館で開催中の三国志展へ行こうと思っていたのですが。
その前に見ていた【円山応挙から近代京都画壇へ】があまりにも良かったため時間と体力と気力が無くなってしまい、それでもなんとか【奈良大和四寺のみほとけ】を見ることができました。
やはり夏の暑さには、だいぶ気力と体力をそがれますね……。
そして、今回この記事を書くことで絶対に【奈良大和四寺のみほとけ】もう一度見に行こうと心に決めました。
Contents
開催概要
場 所 | 東京国立博物館 本館1階11室 |
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期 間 | 2019/6/18(火)〜9/23(月・祝) |
時 間 | 09:30〜17:00(入館は16:30まで) ※ 金曜・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで) ※ 9/20(金)、21(土)は22:00まで(入館は21:30まで) |
休 館 日 | 月曜日 ※ 8/12(月・休)、9/16(月・祝)、9/23(月・祝)は開館 ※ 9/17(火)は休館 |
展 示 数 | 15件 展示作品リストはこちらです |
奈良大和四寺とは
奈良北東部に所在する岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院の四寺(よじ)は、いずれも7〜8世紀に創建された古刹で、きわめて魅力に富んだ仏像を伝えています。
〜展覧会のチラシより〜
それぞれのお寺についての説明は、東京国立博物館の公式ホームページをご覧ください。
展示品と購入した絵はがきについて
長谷寺の難陀龍王(なんだりゅうおう)と赤精童子(雨宝童子)立像
長谷寺の難陀龍王(なんだりゅうおう)と赤精童子(雨宝童子)立像については1089ブログのこちらで紹介されています。展示室でこの2体を見たとき、そのがっしりとして大きなお姿に驚いてしまいました。
2体とも雨乞いの本尊でありながら、雨を止めることもできるそうです。なるほど、降らせることもできるし、やませることもできる力をお持ちなんですね。
長谷寺の難陀龍王(なんだりゅうおう)が、お寺から東京国立博物館まで運ばれる様子が、こちら。雨が降ったときのことも考え準備していたそうですが、搬出当日は晴れたとか。さすが難陀龍王様。
赤精童子立像は、お腹のあたりがリボン結びのようになっていて可愛らしいなぁ、と。色も結構残っていて、完成当時はさぞ綺羅びやかだったんだろうなぁ、と妄想。
長谷寺の十一面観音菩薩立像
今回、長谷寺からは2体の十一面観音菩薩立像がお越しになっています。
まずは展示室のトップバッターとして展示されている銅造の十一面観音菩薩立像。光背は宝相華唐草文様を透彫りしているそうなのですが、それもまた美しく。高さ86センチほどだそうですが(長谷寺公式ホームページの情報)さらに大きく見えました。
木製の十一面観音菩薩立像については、こちらの1089ブログで紹介されています。”右手に錫杖、左手に水瓶を持って方形の大磐石という台座に立つ”というのが長谷寺式十一面観音菩薩立像の特徴だそうです。そうか、皆さん同じポーズという訳ではないのですね。
長谷寺の地蔵菩薩立像
長谷寺公式ホームページにお写真が。
かなり大きなお地蔵様でした。
右手の指をわずかに衣にかけている造形は極めて珍しく
完全に見逃しておりました。三国志展へ行った帰りに、もう一度拝見させていただこうと思います。
岡寺の菩薩半跏像
岡寺の公式ホームページ にお写真があります。
ふっくらとしたお顔立ちを見ていると、ほっとするといいますか。
岡寺の釈迦涅槃像
岡寺の公式ホームページにお写真があります。
釈迦涅槃図という絵で見たことはあったのですが、木造は初めて見ました!と思ったら、やはり日本では絵画で制作されることが多いため、きわめて貴重な作例とのこと。
左右からも見られるように展示がしてあるので、恐れ多くも後ろ姿も見させていただきました。岡寺の公式ホームページには、枕?のようなものが見えますが、東京国立博物館の展示室ではそちらはなく。頭だけを、すっと持ち上げて横になっていらっしゃいます。そっと枕を差し入れさせていただきたい衝動にかられました。
岡寺の天人文甎
岡寺の公式ホームページ にお写真があります。縦39.2cm、横39.2cm、厚さ8cmの四角いタイル。最初は、石に彫ってあるのかと思ったのですが甎(せん)とは、焼いて仕上げたレンガとのこと。ただ、東京駅に使われているようなレンガの色ではなく黒色をしていたため、最初見たときに石かなぁと思ってしまった次第。室内を飾るため、寺院の壁などにはめて使用されたそうです。
すごく楽しそうな表情の天人が印象的でした。髪の毛や、服の飾りなどがふわふわ〜と浮き上がっていて、どうやら着地するところなのではないか、と。自分の部屋にもミニサイズで飾りたくなりました。
岡寺の国宝・義淵僧正坐像
義淵僧正は岡寺の開祖とのこと。岡寺の公式ホームページにお写真があります。
ものすごく特徴的なお顔立ち、あばら骨の感じがリアルで。そして夜になったらお話されてそうな雰囲気でした。
安倍文殊院の国宝・文殊菩薩像像内納入品 仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等
安倍文殊院……聞き覚えがあるような?ないような?と思ったら、あの子たちがいるところでした!!(あの子とは)
公式ホームページは、こちら。一度行ってみたいと思ってたところなのに、名前をしっかり覚えていませんでした。とほほ
ご本尊の文殊菩薩様の像内から出てきた経巻だそうです。
室生寺の国宝・釈迦如来坐像
室生寺の公式ホームページにお写真が。
どこか、こう親しみを感じるどっしり感。
こちらの仏像の衣文は、”翻波(ほんぱ)式衣文”というそうです。
そもそも、衣文とは?
衣文とは、仏像が着る衣のひだやしわのこと。衣文の特徴から仏像がいつごろ作られたか知ることができ、平安時代の前期(9〜10世紀)には翻波式衣文や漣波(れんぱ)式衣文といったものがある
と説明にありました。
この釈迦如来坐像の”翻波(ほんぱ)式衣文”というのは
細くするどい線と太い線を交互に彫って衣文を表現する。まるで小波と大波が繰り返し翻る様子に似ていて、仏像のボリュームを感じられます。
なるほど。
では、”漣波(れんぱ)式衣文”とは??
細い線を細かく刻んでいます。水面で絶え間なく打ち寄せるさざなみのような線が仏像の体の抑揚を効果的に表しています。
室生寺には国宝・薬師如来立像があり、その像の衣紋が”漣波式衣文”だそうです。
公式ホームページにお写真ありますが、画像が小さめで分かりづらいかも?でも確かに、さざなみ感を感じます(ざっくりとした感想)。
テレビ番組『美の壺』で仏像が特集されたときに、この2つの衣文のことも出てきたようです。よろしければ、こちらをご覧ください。
室生寺の十二神将立像(うち酉神と巳神)
公式ホームページにお写真が。ああ、十二神将立像がずらっと並んだところを拝見したいなぁ。
巳神は左手をあげ、なんだか眩しそうな表情をしているなぁと思ったら
厚い瞼をわずかに開く巳神の表情は、陰湿とされる蛇の性格を表しています。
あ、そ、そういう意味だったんですね。
酉神は、とても元気そうに見受けられました。「勢いのある雄鶏のように力強い姿」なんだそうです。
室生寺の地蔵菩薩立像
公式ホームページにお写真が。
光背に比べると像が小さいので、もしかしたら安産寺にある地蔵菩薩の光背だったのではないか、と考えられているそうです。
……小さいとか思ってなかった……そういうものなのかな、って受け取っちゃってました。そうか、光背も、やはり像にぴったり合った大きさがあるのですね。大きければいいというものでもないのですね。勉強になりました。
ところで、この地蔵菩薩立像と次に紹介する同じく室生寺の十一面観音菩薩立像の光背は、板光背というものなんだそうです。
光背とは仏の体から発せられる光をかたちにしたもので、文様を彫り出したり、小さな仏を取り付けたりします。
一方、板光背は平らな1枚あるいは数枚の木の板で作られた光背に絵具や墨で文様などを描いたものです。大きな板に描かれた華麗な色どりが仏像を飾り立てています。
平安時代前期(9〜10世紀)に作られたものが多く、特に奈良県の寺院に集中して伝わっています。
この板光背が美しかったんですよねぇ。うっとりしました。単眼鏡持って行ってたのに、出してみるのを忘れておりました。次回は、ぜひじっくり見たいと思います。
室生寺の国宝・十一面観音菩薩立像
室生寺の公式ホームページにお写真が。
一見すると、怒ってらっしゃるのかな、と。そう感じたのは、私にやましいことばかり身に覚えがあるからなのかもしれません。落ち着きなく、ばたばたと時間ばかり気にして見ていたので、次回はじっくり対面させていただこうかと。
展示室の近くに特設ショップがあり、四寺それぞれの御朱印帳や、エコバック、絵はがき、お菓子などが並べられていました。
そこで購入したのが、こちらの絵はがき。
ものすごく雰囲気のある写真だなぁ、素敵だなぁと思って裏面を見たら写真家・三好和義さんが撮られたそうで。
三好さんといえば、私のなかでは藤田美術館の曜変天目茶碗の写真を撮られた方、という記憶が強くて。あまり人様の名前を覚えるのが得意ではないのですが、あの美しい写真を撮った方だという強烈なインパクトが。
まとめにならないまとめ
まったく見てないに等しかったな、と。今回、この記事を書くにあたり各寺院のホームページを読んだりして、まったく見るべきところを見ていなかったな、と。展示品は15点、されど、そこに凝縮された奥深さ。
なので、次回は今回分かったことを踏まえ、じっくり拝見しようと思いました。
そして、いつか四寺巡りもしてみたい。絵はがきと一緒にショップで貰ったチラシを見つめる今日このごろです。
おまけ
展示を見終わり、同じく1階にある常設ショップへ。
絵はがきを購入したのですが、絵はがきを入れてくる袋のデザインも好きでして。
購入した絵はがきは、こちら。
横浜美術館の【原三渓の美術】で、8月7日まで展示されていた『国宝・孔雀明王像』。
作品保護のため、かなり横浜美術館の展示室で見たときは照明が落とされていた状態で。残念ながら、あまり鮮やかさを感じなかったのですが。やはり本物もこんな感じなのかなぁ、と。チラシなどのメインビジュアルに使われているものが鮮やかだったもので、その鮮やかさは調整した色だったんですかねぇ。
そして、さきほどの展示で十二神像を見た影響で
東京国立博物館所蔵の『十二神将立像 辰神』
以前、東京国立博物館で開催された【運慶展】の展示で本物を見たときは、あまり大きくない像にも関わらず、その存在感とリアルさに圧倒されました。
絵はがきの他にも、ついつい買いたくなるグッズやお菓子が多く、毎回行くたびにぐるぐるぐるぐる悩みつつショップ内を回ってしまうのでした。