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映画『レッド・スパロー』を震え上がりつつ見て最終的には良かったという感想

※ 記事内に商品プロモーションを含んでいます

 

2018年3月に公開された映画『レッド・スパロー』を劇場で観たかったのですが、見逃してしまったのでAmazonでレンタルしてみました。
時折、レンタル料が安くなるセールがあるようで、たまたま『レッド・スパロー』も100円で借りることができました。今度から、こまめに覗いてみようと思います。

さて、『レッド・スパロー』。

なぜ震え上がったのかというと、あまり暴力シーンを見慣れていないもので(いや、見慣れているという人も珍しいか)個人的には少々辛いシーンがあったからです。
ですが、誰が裏切り者なのか?という心理戦が続き、見ているこちらも息を潜め緊張しつつ。そして、ラスト。うむ、すごい。

見終わってから、一体どこからどうなって、と考えつつ再度見返してしまうほど個人的には面白いと感じた作品でした。そして、2度めを見ながら今度は登場人物の本質に震え上がってしまったり。

途中から映画の内容をネタバレしつつ感想を書こうと思います。
書いていくうちに9000文字を越えてしまいました。

 

あらすじ

主人公のドミニカはロシアのボリショイ・バレエの団員であり、常に主役をつとめるほどの実力の持ち主。ある日、舞台での本番中に怪我をしてしまいバレリーナとしての道は閉ざされてしまう。母の病気の治療代や生活費のためにも、叔父であるワーニャの頼み事を引き受けざるを得ない状況になったドミニカ。
1回で終わるはずだったその仕事がきっかけで、彼女は”スパロー”と呼ばれるスパイになる道へと進むことになってしまう。

”スパロー”となったドミニカは、CIA局員のネイト・ナッシュという人物からロシア情報庁内にいるモグラ(裏切り者)の名前を聞き出す任務を与えられる。愛する母のためにも任務を成功させなくてはならない彼女は、果たしてモグラの名前を聞き出せるのか?

登場人物

 

役  名 俳  優 役どころ
ドミニカ・エゴロワ ジェニファー・ローレンス 主人公。ロシアの花形バレリーナだったが事故で引退せざるを得なくなる。
ワーニャ・エゴロフ マティアス・スーナールツ 主人公の叔父。ロシア情報庁の副長官
ネイト・ナッシュ ジョエル・エドガートン 表向きはアメリカの商務参事官。本当はCIA局員
ザハロフ参謀 キーラン・ハインズ ロシア情報庁のお偉いさん。叔父さんの上司っぽい
コルチノイ将軍 ジェレミー・アイアンズ ロシア情報庁のお偉いさん。叔父さんの上司っぽい
監督官 シャーロット・ランプリング 主人公をスパローにすべく鍛え上げる

 

名字の違い

本編とは、まったく無関係なのですが。同じ親戚なのに主人公の名字はエゴロで、叔父さんの名字はエゴロとなっているのが謎で。
叔父さんは、主人公のお父さんの弟にあたる人という設定なのに名字が違うとはこれいかに??
IMDbを見てみましたら、たしかに主人公はDominika Egorova、叔父さんはVanya Egorovという表記になっていました。
日本の公式ホームページでは、叔父さんはワーニャとしか書かれていなくて裏付けがとれないのですが。最後のaが抜け落ちてしまった誤植なのか、はてさて。

ネタバレのないように書いた感想ですが、ネタバレだったらごめんなさい

スパイものといえば『007』や『キングスマン』のように派手な戦闘シーンや、派手な秘密兵器(?)が出てくるイメージがあります。しかしこの作品は、そういった派手な感じはありません。けれども自分は全く気づかないところでスパイというのは市民に紛れ込み、あんなことやこんなことをしていても不思議はないかも、と思ってしまうほど現実味がありました。派手ではない分、その心理的な駆け引きがどういう結末を迎えるのか、騙しているのか、騙されているのか、本音なのか、建前なのか。すべての会話から目が離せなくなりました。

ただ、この映画はR15指定というのと公式ホームページで「ジェニファー・ローレンスが挑む衝撃のエロティック・サスペンス」と書いてあるだけあって確かにエロティックというか、えぐいシーンがあるといいますか。私が怖がりなこともありますが、画面から目をそらしてしまった暴力シーンも数箇所ありました。怖がりだけど本作品が気になる方は、夜ではなく昼に見たほうがいいような気もします。いや、別に夜でもいいのですが。

原作本も気になります

ジェイソン・マシューズさんという元CIA局員の方が書かれたそうです。

小説とは言え局員時代の実体験も生かされているであろう原作。映画との違いなどを確かめたくなってきました。

 

ここから先は、ネタバレを含む感想です。未見の方はお気をつけください!

 

私が気になった人物について、感想を書いていきたいと思います。

 

マトーリン

主人公がスパイへの道へと進むことになってしまう事件の実行犯であり、その後も何かと恐ろしい場面にでてくるマトーリン。
ただ携帯電話をすり替えるだけの仕事だと信じていた主人公は、まさか目の前で人が殺されるとも知らず。震える彼女をロシア情報局?の一室へ案内するマトーリン。そのとき、マトーリンは主人公に毛布をかけてあげるんですよね。

2度めに見たとき、思わず優しいと思ってしまいました。その時の彼女は何も知らされておらず、むしろ被害者に近い感じだとマトーリンも可哀想に思ったのでしょうか。でも、その後に”スパロー”のマルタを、そしてナッシュを手にかける姿からは、その優しさはまったく感じられず。人間というのは、優しさと極度の非道さを持ち合わせられるものかと背筋が寒くなりました。まぁ、はい、フィクションではありますが。

叔父さん

主人公のお父さんの弟。お父さんが亡くなってからは疎遠になっていたようですが、どうやら主人公のお母さんは昔から叔父さんの娘を見る目つきが変だと思っていた様子。だからなるべく叔父さんと娘を近寄らせないようにしていたようなのですが……。

バレエダンサーとして生活と母親の闘病を支えていた主人公が、怪我でダンサーとしては暮らしていけない、と今後の生活に悩んでいたところに現れる叔父さん。怪我から3ヶ月後という、怪我の状態は一段落し、ダンサーとしてはやっていけないとひしひしと主人公が絶望を感じていたであろう微妙な時期に再び現れる叔父さん。
映画を最後まで見終わると、もはやすべてが叔父さんの陰謀に見えてきました。

まず、主人公の父親をあれやこれや手をつかって殺害したんじゃないかとか(作品では一切父親の死因には触れられていないにもかかわらず、叔父さんならやりかねないと思ってしまいました)。

主人公がダンサーとしては致命的な怪我をしたのは、恋人であり踊りのパートナーであった男性が本番で着地に失敗し(と見せかけて実は故意に)主人公の足の上に着地してしまったからで。でもそれは、男性が二股かけていた別の女性バレリーナから主人公に怪我をさせてしまえ、とけしかけられていたわけで。でもでも、もしかしたら、その女性バレリーナを影でけしかけた人物がいたかもしれず。ああ、こわい。一切、そんなことを裏付けるシーンはでてこないけれど、あぁ、こわい。きっと叔父さんだわ。「不運も幸運も自分が招くんだ」なんて主人公に言っていたけれど、ぜったい叔父さんが仕掛けたんだわ(根拠のない確信)。

主人公に頼られたい、そして支配したいという欲が膨らみすぎて、叔父さんは主人公をドン底に落とすような周到な罠を次々と仕掛けていたんじゃないかと。
そうでなければお見舞いにきたはずなのに「次のダンサーは、なかなか優秀な人が選ばれたようだ」みたいなこととか言う必要ないし、彼氏が浮気していて、実はその相手が自分の代わりに選ばれた女性で、かつ二人が共謀して自分を陥れたなんて証拠写真とボイスレコーダーを置いていく訳ないですよね。狡猾というか、愛がねじれ過ぎててこわい。

どういう訓練を受けて”スパロー”になるかも知っていたのに、わざわざスパロー養成学校へ入れるという。心理戦だけでなく、色仕掛けで相手から情報を引き出す”スパロー”。自分の身内であれば、誰だってその学校だけは避けるだろうに。もう、他にも愛がひっくりかえり過ぎててびっくりなシーンが多々ありました。

確かに、叔父さんの見抜いていたとおり主人公は生き延びて、自分の目覚めなくても良かった才能を開花させて、というか開花させざるを得なくなって。叔父さんの言う「あらゆる手がかりをたどり、あらゆる犠牲を払え」の通りに実行して叔父さんを破滅させた主人公。主人公に殺されて(もちろん彼女が直接的に殺した訳ではないけれど)ある意味本望だったのでは。あれだけ主人公に恨まれることしてるのに、自分が窮地に追い込まれるなんて危機感はゼロだったんですね。自称:人より一歩先を行ってるはずだったのに。

叔父さんは主人公が困りはてた上に、自分に頼ってくることに異常なる悦びを感じていることを知り抜いている主人公。だからこそ、ものすごい拷問にも耐え、「私は優秀でしょ?」と弱々しく笑うことで叔父さんが多少の憐憫の情を覚えると同時に快感をおぼえることまで計算していたんだろうな、と。そして自分を保釈するだろう、と読んでいた訳で。でも、下手すると主人公は命を奪われかねない状況で。すごい賭けですよねぇ。いや、まぁ、フィクションなんですが。

最後にもう一度主人公が叔父さんに向かって「私は優秀でしょ?」って言うシーン、最高でした。叔父さんも何かいいかけて、結局何も言わなかったですね。完全なる敗北と自分の死を予感していたからでしょうか。

人が人を支配するには徹底的に選択肢を奪うこと、弱みを利用して自分の望む方向へ進ませられることを、叔父さんはまざまざと教えてくれました。だからといって、自分がしようとか、それができるとはまったく思っておりませんが。そして、もしかすると叔父さんもある程度は同じようなことをされ、裏切られてきたのかと少々同情を感じ……ないです。叔父さん、ひどすぎるから。

まったく関係ないのですが叔父さんを演じたマティアス・スーナールツさんが、とてもプーチンさんに似ていて。以前、『リリーのすべて』を観たときもプーチンさんに似ているなぁと思っていたので今回のキャスティングは偶然なのか故意(?)なのか、なんてことまで妄想してみたり。


『リリーのすべて』でスーナールツさんは画商の役で出演されています。
私が今までみた映画やドラマのなかで一番記憶に残るキスシーンのある『リリーのすべて』。いつか感想を書いてみたいと思っています。

監督官

そういえば、役名は何というのかと調べてみたら監督官としか書かれておらず。なるほど、訓練中は別名を使い本名は他の訓練生にもスタッフにも明かさないように決められているだけありますね。
それは万が一、敵側に捕まった時に不用意に仲間のことを漏らさないためでもあったのかしら。

国の役に立たなければ始末すると公言してはばからず、相手の弱点を見抜き、そこにつけ込んで誘惑して情報を引き出す術を叩き込む鬼教官。きっと彼女も元スパローなんでしょうねぇ。「人間の欲望はパズル。欠けたピースを見抜き埋めてやれば相手を操れる」というのは、叔父さんの得意そうなことですよね。叔父さんも、まさか第4学校で???
最初は25人ほどいたように見えた候補生たちが、なんだか人数減っていく感じに見えたのも怖かったです。主人公の横にいた子は、どうなったんだろう……。

皮肉にも監督官や学校で習ったことが生き残るために役立ってしまったという。もうその道でしか生きていく選択肢がなかったから、仕方ないといえば仕方ないのですが。”スパロー”は強くあらねばならない、まさに監督官の教えどおりの行動でした。

主人公が本当は叔父さんに何をしたのか、果たして監督官は気づいたでしょうか。表彰される主人公を見ながら拍手をしていた監督官の表情、なんだか気になります。

主人公

花形バレエダンサーとして主役をつとめ、恋人もいて、病気の母のことは心配だけれども自分が支えていけるという状況で、主人公は自分の生活に満足していたであろうし、プライドもあったと思うのです。
それが、何もかも屈辱的に奪われ、かつ、自分も怒りから暴力をふるい返してしまったという、あまりの落差。杖で殴られた元恋人と相手の女性は怪我から復帰できたのでしょうか。映画の最後で主人公がバレエの舞台を見に行き、1組のペアが踊っている様子を見ていましたがそれが彼らなのでしょうか??顎をくだかれたそうですが、大丈夫だったのかしら。

彼女が偽のパスポートでブダペストへ入国したときパスポート取得日らしき年号が2016年で、偽の誕生日1990年3月20日となっていました。だいたい、20代半ばという設定なのかな、と思いながら見ていました。

それにしても、強い。彼女にとって唯一、生きる理由であるお母さんのためにそこまでできる強さ。親孝行だなぁ。でもナッシュと出会い、彼の生き方に触発された面もあるのかもしれません。

主人公とナッシュ

ナッシュは、主人公と出会って早々に主人公が怪しい人物であることを見抜きます。あっと言う間でしたね。すると主人公も偽名を名乗ることをやめ、堂々と本名を名乗ります。ナッシュは”モグラ”から自分に関する情報も入手するだろうからという思惑もあったのかもしれません。もう、ここから早くも駆け引きが始まっていますよね。

それまでに登場したロシア側の男性陣は、叔父さんにしろ、ウスチノフ(主人公の目の前で暗殺された男性)にしろ、ブダペストのチーフにしろ、「困ったら言って欲しい、手を貸すから」みたいなことを言うんですが。その言葉には必ず「その場合は見返りを求めるけどね」といった意味を含んでいるな、と。

しかしナッシュは主人公に対して、アメリカ側のスパイにならないかと提案したとき「身の安全を保証する」「今みたいなこと(相手を誘惑し、情報を聞き出すこと)はさせない」と言い、主人公がイギリスからロシアへ強制的に帰国させられるときは主人公の上司を空港で殺してまで主人公を救うつもりだった、と。厚い、情に厚すぎる。
主人公がナッシュに「見返りもないのに私を助けてくれるのね信じられない」と。ですよねぇ、今までは見返りばかり要求されてきたんですものねぇ。その言葉は、彼女の本心だろうなぁと思いました。

”モグラ”と自分の交換をロシアの上層部に持ちかけ、最終的に本物の”モグラ”を守ることでナッシュの意志を尊重していること、自分も腐った政府の一員にはならないという意思表示を感じました。
叔父さんが連行されてきたとき、ナッシュが振り返って黙って主人公を見つめるシーン好きでした。自分は”モグラ”の本当の正体を主人公には漏らしてないことを証明でき、そして彼女は叔父さんに代償を支払わせた、その手腕に言葉を失ったのかもしれません。

ラストシーンで、主人公が部屋にいると電話が鳴り電話口からは音楽だけが流れてきます。それは主人公がバレリーナ時代に初めてソロで踊ったという『グリーグ』。(私は音楽の知識がなさすぎるのですが、エドヴァルド・グリーグというノルウェーの作曲家の方の名前であって、本当は曲名ではないんですよね??)
その曲が思い出の曲であることを主人公はナッシュに話していたので、電話の相手は喋らずとも彼である、と。そして、彼女の”モグラ”としての新しい人生の始まりの曲にもなったのかな、と思ったのでした。

これからは初代”モグラ”と協力し、少しずつ腐った政府の改革をしていくのかしらなんて思わせるエンディングでした。

いつプランを完成させたのか

主人公は、叔父さんを”モグラ”に仕立てるプランをいつ完成させていたのでしょうか?

彼女は叔父さんが”モグラ”であるという証拠を2つでっち上げます。

・ナッシュ向けの”メトカ”のついたグラス

・ウィーンの銀行で開設した叔父さん名義の通帳にアメリカから25万ドルの入金があった

1回めに見たとき、”メトカ”って何だったっけ??でも、あのグラスは確かに主人公がナッシュの部屋から持ってきたグラスだった、としか認識していなかったのですが。
主人公が学校で、”メトカ”は標的ごとに調合した微細な粉で接触によって相手に移り6週間は検出可能という説明を受けるシーンがあったことに2回めで気づきました。

つまり彼女は、ナッシュの家にあがりこんでナッシュに”メトカ”をつける必要があったため、わざとブダペストの男性チーフに殴られる必要があったんですね。ナッシュの家に入り込む理由を作るために。ただレストランでナッシュと食事をしただけでは、”メトカ”をつけるのは難しいだろう、という判断なのかな、と。
叔父さんの家にあるグラスとナッシュの家のグラスがうまい具合に似ていたのがあって良かったな、と。
でも、もしかしたら彼女はナッシュの家に忍び込んだときグラスだけでなく念のため別のものも入手していたかもしれませんが。

彼女は”モグラ”の名前を聞き出す任務のためにブダペストへ行くときには、すでに叔父さんを陥れるチャンスがあれば……とは思っていて、まずはナッシュの”メトカ”がついたグラスを盗んだのではないかと。

そしたら思いがけずCIAへスカウトされる話が持ち上がったため、ウィーンで叔父さん名義の口座を作っておこう、と。そこへアメリカから入金があれば動かぬ証拠になる、そう思ったんだろうなぁ。もうてっきり主人公名義、もしくは、母親名義の口座かと思いました。アメリカで運が良ければお母さんと暮らせる生活費かと。
叔父さんのコートから何かを取り出して見てるとは思ったけれど、叔父さんが最近どこの国へ行ったかを探っていたんですね。それでウィーンへ行ったことを知り、そこで口座を開設した、と。うむむ、用意周到。

彼女としては、そこまでお膳立てができた段階で叔父を”モグラ”として告発するつもりだったのかもしれません。時間稼ぎをしたかったのは、叔父さんを陥れる準備をしていたからなんじゃないかと。それならば本物の”モグラ”も守れるし。

が、そこへ思わぬ邪魔者というか刺客マトーリンが登場。ナッシュを救うためマトーリンを殺さなければならなくなり、挙げ句に本物の”モグラ”が現れて自分を差し出せ、と。

本物の”モグラ”こと将軍のストーリーとしては、こういうことでしょうか。
”モグラ”が自分であることを知られた将軍は、マトーリンにもっともらしい理由をつけて主人公たちを殺すよう命令。主人公の反撃にあったマトーリンが死んだ、というストーリーにすればロシア側には筋書きは通ります。通りますが、主人公の思い描いていたシナリオと違ってしまい叔父さんに復讐ができなくなってしまいます。

まずは、本物の”モグラ”をロシアへ差し出すことに納得したように見せかけ。最終的には自分のプラン通りザハロフ参謀へ叔父が”モグラ”であることを報告。
でも、最後の最後ヘリから降ろされてきた人物が叔父であることを確認するまでは自分のプランが本当に上手くいったのかは確信が持てなかったのかもしれません。

本物の”モグラ”は、自分が捕まる気満々で玄関の鍵まで開けていたのに。さぞかし驚いたことと思います。

いずれにせよ、彼女はあらゆる機会を逃さず、機転を利かせて自分のプランを成功させたのがお見事でした。ええ、フィクションではありますが。

”モグラ”

本物の”モグラ”ことコルチノイ将軍は3年にわたり情報をナッシュに渡している関係とか。信用できない者とは取引しない将軍は、いかにしてナッシュと知り合ったのかスピンオフが見たいと思ってしまいました。

地位が高く生活も安泰している彼ですら、本当の自由はなく、いつ裏切られるか分からない”やられる前にやれ”という世界にいるというのが怖かったです。
自分がモグラじゃないことをカモフラージュするためだろうとは思うのですが、確かに主人公が暗殺現場に居合わせたときも、ナッシュも殺害したほうがよいとか、すぐ殺す方向にもっていってたなぁ、と。

”モグラ”とナッシュが共通して言った言葉

”モグラ”ことコルチノイ将軍は主人公に向かって「姪を第4学校に入れるとはな」と言います。ただ、主人公は将軍が”モグラ”だとは夢にも思っていなかったので「愛国心です」と答えるにとどまりましたが。あれは、将軍の本音だったんじゃないかと思いました。本当に、極悪非道な叔父さんだ。
ナッシュも「なぜ自分の姪をそんな部隊(スパロー養成学校)に入れる?」と。
2人は怒ってくれているのです、主人公の周囲では誰も自分を擁護してくれる人はいませんでしたが。

ナッシュは、アメリカのスパイとなりロシアの奴らに代償を払わせろ的なことをいって主人公を勧誘します。将軍も「君の叔父たちに代償を払わせろ」と言います。
ただ、ナッシュのなかでは主人公を2代目”モグラ”にしようという考えはなかったのかもしれないな、と。というのも、彼女の亡命資金25万ドルも用意したから。ただ、将軍としては彼女の亡命ができたとしても、そうなったら母親の命は保証されないだろうということを今までの経験として分かっていたのではないか、と。バレリーナの道を絶たれてしまった彼女の人生を本当に残念がっているけれども、”スパロー”になってしまった以上はもう彼女にはロシア情報庁で確固たる地位を築いて2代目”モグラ”をやってもらいたい、と。

ただ、主人公としては別に”モグラ”になるつもりはなくて。叔父に復讐できて、母親と安心して暮らせるようになれば、とだけ思っていたのではないかと。でも、ロシア情報庁が彼女を手放すかは不明だし、この先また”スパロー”として働かされるよりは地位をあげて、かつ、アメリカに協力する人生のほうが幸せなのではないか、と将軍は先を読んでいたのかしら、とかとか妄想が止まらないのでした。

よろしければ、こちらのスパイ映画もおすすめです

『レッド・スパロー』同様、組織に紛れ込んだ”モグラ”を探すスパイ映画で私がおすすめするのは

『裏切りのサーカス』です。

『レッド・スパロー』はCIA対ロシア情報部でしたが、『裏切りのサーカス』は英国の秘密情報部対ロシア情報部のお話です。
サーカスというのは秘密情報部の通称だそうで、ロンドンのケンブリッジサーカスに本部があるからだとか。象やトラがショーをするサーカスではないそうで。

『裏切りのサーカス』には、『レッド・スパロー』にも登場したキーラン・ハインズさんも出演されています。そうそう、この原作本を書いたジョン・ル・カレさんもイギリスの秘密情報部で働かれていたそうです。

私が最初にこの作品を観たときは、まったく俳優さんたちについて知らなかったときでした。少しずつ映画を観るようになってから「この作品、ものすごく出演陣が豪華だったんだ!!」と驚きました。

興味ありましたら、ぜひ。

女性スパイが主役の映画といえば『アトミック・ブロンド』も

後日、シャーリーズ・セロンさん主演の『アトミック・ブロンド』を見ました。
こちらは『レッド・スパロー』よりも激しいアクション、画面の切り替え、主人公の衣装、1980年代の音楽の使われ方が何しろカッコいい作品でした。一番洋楽を聞いていた時期でもあったので、それでより作品に入り込めたのかもしれません。

ジェームズ・マカヴォイさんが出演する作品は今までナルニア国物語しか見たことがなかったもので、こういう役もいいなぁと惚れました。

 

 

ABOUT ME
コアラ
館ファン倶楽部の管理をしているコアラです。 週末は映画館か美術館にいることが多いので、家族からは「今日はどこの館(かん)へ行くの?」と聞かれるようになりました。 皆さんのお役に立てるような館情報を提供していけたらなと思っています。

POSTED COMMENT

  1. leochan より:

    面白い分析で、一気に読めました、ありがとうございます!ちなみに「苗字の違い」に関しては、確かロシア語は男性・女性で語尾が変化するので(固有名詞も)、誤植ではないと思います。

    • コアラ より:

      leochan様 コメントありがとうございます。
      最後の最後まで面白い作品でしたよね。ついつい、あれはこれはと考えて文章が長くなってしまいました。楽しんでいただけたのなら嬉しいです。

      そうでしたか苗字でも語尾が変化するのですね!教えていただきありがとうございました。

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